クスノキ科 ゲッケイジュ属
“ローリエ”や”ローレル”などのスパイスとして知られているゲッケイジュ。「月桂樹」という和名もあり、古くから庭木としてもポピュラーな存在です。勝利のシンボルとしてイメージする人も多いのですが、古代ギリシアでは、太陽の神アポロンを讃えるお祭り「ピューティア大祭」の勝者にこの枝葉を輪にした月桂冠が与えられていたため、とされます。といっても、アポロン神は詩歌や音楽・芸術の神でもあるため、芸術面に秀でた者に贈られたのが最初だったとか。いつの間にか、勝利の方がイメージが強くなっていきましたが、今でも欧米では各分野の名誉の象徴として位置づけられているようです。
常緑樹の中でもポピュラーなゲッケイジュ、魅力を再発見して下さいね!
ゲッケイジュの原産国は地中海沿岸。どことなく、そのドライで温暖な雰囲気をイメージさせる尖った葉は艶があり、美しいグリーンが家を色鮮やかに引き立ててくれます。
枝葉をこんもり茂らせる姿は目隠しとしても最適!葉をドライにして、煮込み料理のスパイスとして使ってもよし、リースにしてもよし、他にもその独特な効能からたくさんのメリットが享受できる木です。
ご自宅のお庭でも、ぜひ積極的に暮らしの中に取り入れて楽しんでみませんか?
ゲッケイジュは常緑高木。放っておけば一般住宅の庭でも3m近くには生長します。また萌芽力が強いので、枝を分岐させて横にもよく茂っていきます。
植え付けスペースとしては、少なくとも幅2m前後は確保しておきたいところ。あまり狭いスペースに植えるのは病害虫予防のためにも、おすすめできません。日照としては、本来は明るい場所を好みますが、半日以上の光が入る明るい日陰でも問題なく育ちます。耐寒性はある程度はありますが、関東以北で冬期にー9度以下になる地域は防寒対策が必要になります。
ゲッケイジュの原産国は地中海性気候。夏は乾燥し、雨が少ない気候のもと、葉を厚くして乾燥から身を守るレモンやオリーブなどと同様の硬葉樹林に生息しています。つまり、植える場所が日当たりが良くてもジメっとしているような場所はNG。水はけのよい、風通しの良い所に植えてあげましょう!
ゲッケイジュは刈り込みに強く、萌芽力が旺盛。どこを切ってもよく新芽を出してくれるので、初心者にも育てやすい木といえるでしょう。下枝を払って上部だけこんもり丸く形づくるスタンダード仕立てに!といった自由な剪定にチャレンジできるのも魅力のひとつです。
萌芽力が強いゲッケイジュはたまに列植したり、生垣などに使われることもあります。ところが、こうした密な植え方は通気が悪く、カイガラムシの繁殖やすす病の併発に繋がることも。ゲッケイジュは堅い殻に覆われたルビーロウカイガラムシが付きやすいことでも知られます。
ゲッケイジュは枝葉が密集しているため、カイガラムシが付きやすい
カイガラムシはギッシリと枝に密集して枝を吸汁します。カイガラムシの被害と共に、目立ってくるのが「すす病」。これはカイガラムシの排泄物をエサにするカビ菌の一種。名前の通り「すす」のように葉に覆い被さり真っ黒にしてしまいます。こうなってしまうと、美観はもちろんのこと、光合成も妨げられ、次第に木そのものが元気を失ってしまいます。列植や密集した植え方は避けたいものです!
明るく乾燥した場所を好むゲッケイジュ。密植は避けましょう!
剪定は、春の新芽が出る3~4月頃、または6月頃、不要な枝や樹冠から飛び出た枝を根元から切り除き、形を整えます。
それ以外の時期でも「気が付いたら」でも構いませんので、普段から混み合っている枝はなるべく頻繁に手を入れて、風通しの良い環境を心がけましょう!
もし、ゲッケイジュにカイガラムシがギッシリ付いてしまったら、エアゾール剤の他、歯ブラシなどでこそぎ取る方法もよく紹介されていますが、ルビーロウカイガラムシはそう簡単には取り除けません。思い切って食害されている枝ごと剪定してしまうのも1つの手です。その年は少し枝葉が寂しくなりますが、厳寒期を除いて行えば、また翌年にはたくましく新梢を出してくれるでしょう。
ゲッケイジュは雌雄異株(しゆういしゅ)。つまり、雄と雌の木があり、国内で流通しているのは殆どが雄木のため、結実はしないと考えた方が良いでしょう。
とはいえ、雄木といっても雄花は付きます。4月頃に咲く淡い黄色い花は花を近づけると甘い香りも漂います。実は付かなくても、ゲッケイジュは何といっても葉をスパイスとして使うことができるので、ぜひ次の項でローリエとしての使い方を参考にしてみてくださいね。
3~4月頃コロンとした粒のような蕾を付け、4~5月にかけ花は満開に。淡い黄色の花からは、ほのかな芳香も楽しめます!
カレーやポトフなどの煮込み料理に入れることでも知られる「ローリエ」。「ローレル」という呼び方も聞いたことがあるかもしれませんね。この違いは単に「ローレル」が英名で、ローリエの方はフランス名というだけの違いです。葉は爽やかな苦みがありますが、生のままだと苦みが強いので、基本は乾燥させて使います。葉は直射日光に当てないように、日陰で1~2週間重ならないように天日干しするだけです。パリパリに乾燥した葉からは、とてもスパイシーで甘い香りが漂います。あとはジップロックなどに入れておけば、いつでも使う分だけ取り出せますよ。
1週間前後、乾燥させれば爽やかな香りに!
葉を煮込み料理に入れる際は鍋に入れて煮込み、苦みが残らないよう途中で取り出せばOK。ちぎったり、細かく刻むとより香り高いスパイスとして活躍してくれます!
さらにオリーブオイル等に漬けておけば、香り付オイルとして使うこともできます。煮込み料理の他には、クローブやディルなどと併せて、ピクルス液を作るのもおすすめです。
煮込み料理はもちろん、オイル漬けやピクルスなど、積極的に使いたいゲッケイジュの葉
さらには、剪定した枝葉を集めてリースやスワッグを作ってみるのもおすすめです。ローズマリーやセージなどのハーブ類と組み合わせれば、香り高いディスプレイになりますよ。
いかがでしたか?目隠しだけではない、ゲッケイジュの魅力、伝わりましたでしょうか?
是非、ご自宅にもお迎えして、お料理にディスプレイに…色々暮らしに取り入れて楽しんでみて下さいね。