モクセイ科 オリーブ属 常緑高木
オリーブといえば、銀白色の細長く尖った葉、そしてブッシュ状の個性的な樹形が印象的ですね。
日本での栽培実績としては、瀬戸内海の小豆島で100年以上もの歴史があります。とはいえ、関東近辺で庭木として盛んに植えられるようになってきたのは、ここ20年ちょっとのこと。
では何がきっかけで、これほどまでに日本人の中でオリーブがポピュラーになったのか?ひとつには、ガーデニングブームの到来と共に、洋風から地中海へ憧れが移行し、お庭のシンボルツリーとして盛んに植えられるようになって行ったことが大きな背景としてありそうです。
洋風、和モダンにも似合う個性的な印象のオリーブは今も庭木の人気ナンバーワン!
当初は目が飛び出るほどだった価格も落ち着き、それなりにお手頃になってきたこともまた一つの要因かもしれませんね。栽培方法も今では広く知られるようになり、「気軽に植えられる木」という印象に変わっています。
オリーブを栽培にするには年間平均気温が15℃前後は必要とされますが、実はある程度の耐寒性があり、成木であれば-10度前後にも耐え得る強靭さも。庭木として採用しやすいところですね!
もしお庭に植えてみたいけれど、上手く育てられるかな?と不安に思っているようでしたら、管理方法はとてもシンプルなので、ぜひここで栽培のポイントや品種による樹形や実、葉の違いなどを知ってから、理想の「オリーブのある暮らし」を手に入れてください!
イタリアやギリシャ、スペインなど地中海沿岸を原産地とするオリーブは、日当たりが良い環境、水はけのよい土壌が大好きな常緑高木です。耐寒性も高く関東周辺の環境であれば越冬が可能です。
とはいえ、常緑ということは休眠せずに冬を越さなければなりません。冬場にいきなり地面に植え付けたりするのは避けたいところ。鉢で買ってきたものは、霜が降りる季節はそのまま過ごし、翌春、地に下ろして徐々に環境に馴染ませて行ってあげましょう。
地植えにしたオリーブは、品種によっては驚くほど旺盛に枝葉を伸ばして生い茂ります。樹高もその場所に適応すれば5m前後に生長します。もしあまり大きくしたくない、コンパクトに楽しみたい、という場合は大きくならない品種を選んでプランター栽培にすることをお勧めします。
オリーブは素焼き鉢はもちろん、モダンな印象を演出したいなら、ファイバークレーや磁器などとの相性も抜群です。
生長に合わせて植え替える手間はありますが、プランター栽培は日照や風通しなど、適した場所を選べるメリットもあります。
ファイバークレーのプランターに植えれば、モダンな印象に!
世界中に存在する品種は1000種類を超えると言われるオリーブ、日本国内でも近年ではホームセンターや園芸店、ネット等でも実にさまざまな品種を取り寄せることができるようになっています。
「あまりに色々あっていったい何を決め手にしたらいいのか…」と品種で迷ってしまったら、まずはオリーブに描くご希望のイメージを書き出してみるのはいかがでしょう?
例えば、葉が銀色で美しい、とか枝や幹のスタイルがカッコいい、実が付いたらオイル漬けにしたい…などなど。それが明確になってくると、品種もおのずと絞られて来ます。
というのも、オリーブは樹形ひとつを取っても、根元のあたりから枝が分岐して葉が生い茂る野性的なものもあれば、一つの幹から枝が先の方で何本か出ているような風情を感じさせる樹形のものもあったりと、品種によって大きく個性が分かれます。
オリーブの樹形は、大きな分類として野性的に横へ広がって分岐する樹形は「開張型」、上へ上へ幹が伸びて行く樹形は「直立型」とに分かれます。オリーブをシンボルツリーや目隠し等といった庭木としての役割を持たせたいのであれば、この樹形の特徴を知ってから選んでみるのも良いでしょう。
さらに庭木として選ぶ場合のおすすめの選び方としては、あまり選択肢を広げ過ぎないこと。広く流通しているものの中から選ぶメリットは栽培方法が調べやすいこと等に加え、庭木として欠かせない樹形をたくさんの中から選ぶことができる、という点にあります。
ちなみに果実を楽しみたい場合、知っておきたいのが受粉樹の必要性。オリーブは自家不和合性が強いため、ほとんどの品種が1本では実は成りません。実を収穫したいのであれば、他にもう一本、相性の良い品種を近くに植えてあげる必要があります。
今回ここでは、国内の園芸店や植木店、ホームセンターやネットでも入手しやすい代表的な品種をご紹介します。
左)典型的な開帳型のオリーブ 右)鉢植えで玄関先でも育てられる直立型のオリーブ
カリフォルニア州で発見されたスペイン系の品種。葉の裏がシルバーグリーンでパッと目に入りやすいのと、スラっとした樹形が特徴的です。生長がゆっくりなので、プランター栽培にも向いています。
受粉樹としてルッカやネバディロ・ブロンコ等との相性が良いので、一緒に植えるのであればこの2品種を植えてみるのもおすすめです。
イタリア原産の品種。どっしりとしたシンボルツリーにするのであれば、この品種がおすすめです。生長も早く、放置すると横に枝を張り出してボリュームが出てきますので、あっという間に存在感たっぷりになるでしょう。逆に言えば、それだけ幅も出るだけに、プランター栽培などには向いていません。
また実が小さいため、あまりピクルス等には向きませんが、オイルづくりには適しています。
自家結実性が高い品種ですが、あまり数は期待できないので、受粉樹としてミッションやマンザニロ、ネバディロ・ブランコ等の相性が良い品種を近くに植えるのもおすすめです。
スペイン原産の品種。現地の言葉では「小さなリンゴ」という意味で、呼び名の通りのかわいい赤い実が成ります。この実はやわらかく、主にピクルスづくりが楽しめます。
樹勢が強い一方で、萌芽力は強め。あまり難しく考えず、剪定を頻繁に行うことができるので、初心者向きともいわれます。また樹高が低めなので、素焼き等のプランターで楽しむのにも向いています。
スペイン原産の品種。樹勢が強く枝葉を盛んに伸ばします。よく茂るので目隠しなどにうってつけです。狭い場所には向きませんが、堂々とした樹形なので、広いスペースが取れるのであれば、シンボルツリーとしてもおすすめ。耐寒性も高く、花粉も多いので、受粉樹にも適しています。
実はやわらかいので、ピクルスには不向きともいわれます。
イタリアのシチリア島が原産の品種。スリムな樹形なので、狭い場所にも植栽できるのがうれしい品種です。また、尖った葉や美しい枝ぶりは観賞価値も高く、樹高も高くなり過ぎないので、シンボルツリーにも適しています。花粉がとても多いことでも知られ、受粉樹にもう一本、と悩んだ時にはおすすめの一本です。果実は中型なので、ピクルスにもオイルにもできます。
スペイン原産の品種。枝葉が茂りやすく、スタイリッシュにまとまりやすいのが特徴です。また、自家結実性があるため、異種を植えなくても1本でも実を付けやすい、という特徴も持ち合わせます。大き目の実は紫色に熟してくると艶が出て美しく、観賞価値はもちろんのことピクルスにも。油の含有量が多く、スペインでは高品質なオイルの原料となる代表的な品種です。実も樹形も1本で楽しめるといえば、この品種でしょう。
庭木として植えるオリーブ、植え付けや栽培のポイントを最低限、押さえておけば健やかに育ってくれます。そのためにも、簡単にその性質を知っておきましょう。
オリーブの植栽でまず頭を悩ませるのが、実を付けるためにも受粉樹として2本オリーブを揃えたいけれど、すぐ近くに植える場所がない、という問題。残念だけど実は無理かな…とあきらめがちですが、あまり悲観することもありません。
というのも、オリーブは風媒花。粒子の細かい花粉が風に乗って遠くまで飛んで受粉するので、あまり無理に近くに植える必要はありません。
また、お庭の中に2本植える場所が見当たらない…という場合は、周囲のお宅を見回してみて下さい。もしかすると近所に受粉樹となるオリーブがあれば結実する可能性も多々あります。まず1本だけ植えてみて、1~2年結実しないか様子を見てみましょう。実際に単独で植えたお庭のオリーブに、毎年実がたわわになっている、というケースがよくあるのです。
オリーブは痩せ地でも育つとよく言われますが、酸性土よりはアルカリ性に近い土を好みます。日本の土壌はどうしても酸性土に近づきがちですので、余裕があれば、できれば1年に1度ほど苦土石灰などをすき込んで酸度調整してあげたいところです。
また、加湿は苦手。水はけの良い土壌にするためにも、植え付ける場所が粘土質の場合などは、赤玉土を半分以上は混ぜこんであげるなど、水はけの改善を行ってから植えましょう。
理想は日光がよく当たる場所ですが、半日は日が陰るような半日陰にも耐えてくれます。但し、あまり暗い場所では枝ばかり徒長してきて、葉の数も少ししか出ない、実付きも良くない状態になります。
ベランダ等で育てる場合は、特に建物の陰になって数時間の日照になりがちですので、日照不足を補うタイプの観葉植物用などの肥料をあげてみるのも良いかもしれません。
オリーブがいくら強靭だからといって、まったく病害虫がないわけではありません。とりわけ、オリーブアナアキゾウムシやコガネムシの幼虫、ハマキムシなどには注意が必要です。なんだか枝葉の勢いが衰えてきたな…?と思ったら、次にご紹介する害虫の被害を疑ってみましょう。
まずオリーブアナアキゾウムシは幹の中に産み付けた卵から孵化した幼虫が、幹の中を食い尽くします。被害が大きくなると木全体を枯らしてしまうことも。
これを発見するには、木の幹や根元をよく観察しておく必要があります。地面におがくずが落ちていたり、幹に小さな穴がポツポツと無数に空いていたら、ゾウムシが入っている可能性は大です!ホームセンターや園芸店であればノズルの付いた専用の殺虫剤があるので、発見次第、ノズルを穴に差し込んで駆除しましょう。
コガネムシの幼虫は根を食い荒らしてしまうため、幹や枝葉が徐々に元気がなくなって行きます。根に付くため発見しにくいのですが、ちょっとでも様子がおかしい場合は根の周りを掘り返してみましょう。白い幼虫が丸まっていたら即、取り除いておきます。コガネムシの幼虫は酸性に傾いた土を好むので、やはり1年に1度は苦土石灰などをすき込んで、土壌を中和することで予防できます。
ハマキムシは、文字通り葉を丸めてその中から葉を食害して行くため、見た目で発見しやすいのが特色です。被害は葉だけでなく果実の中にまで及ぶので、早めの発見、駆除を心がけましょう!
ハマキムシは葉が密集して風通しが悪くなっている所を好むので、常に枝葉を風通し良くなるよう剪定しておきたいところです。また、葉の裏に卵をビッシリと産み付けるので、4~11月の活動期には頻繁に葉っぱの裏はチェックしておきましょう。被害が大きくなってしまう前に、気付いたら葉ごと手で取り除いておきたいものです。ベニカS乳剤、スミチオン乳剤等の薬剤散布も効果があります。
左)オリーブアナアキゾウムシ 中)コガネムシの幼虫 右)ハマキムシ
いずれの薬剤も果実を収穫する予定がある場合は、よく収穫時期のどのぐらい前まで散布が可能か、確認した上で使いましょう。
・加湿が苦手なので、水やりは土が完全に乾いてから!
・土が酸性に傾くと害虫も付きやすくなるので、年に1度は苦土石灰などで土壌の中和を!
・元気がない時は幹や葉をよく観察して害虫による被害に注意を!
なんだか我が家のオリーブ、ちょっと元気が無いな…と感じたら枝葉や幹、根鉢の周囲の土をチェック!
オリーブの実はタンニンという渋みを感じる成分が含まれており、残念ながら生では食べられません。でも重曹や塩などで下処理をして渋を抜けば、ピクルスやオイルのほか、干したり、焼いたり!色々ないただき方が楽しめます。
大変そう、面倒くさい…と思いがちですが、その分、出来上がった時の味わいはひとしおです!
下処理のもっともメジャーな方法としては、収穫した実を洗ったら、種は無理に抜かなくてもOK。(ただ渋が抜けるまでに少し時間がかかりますが…)楊枝で穴をいくつか空けて水に浸けます。
重曹で渋を抜く場合は、重曹を4%ほど入れた水に浸けます。水だけの場合は10日ほど浸けます。(※どちらも毎日水替えが必要です)水だけの場合は、その後、水を捨てて塩をまぶして1週間~10日ほど冷蔵庫に寝かせます。重曹の場合は10日ほどで渋が抜けます。
あとは塩漬けにしたり、オリーブオイルに漬けたりとお好きな方法でいただけます。
渋を早く抜きたいのであれば、黒くなるまで熟した果実を使う手もあります。もちろん、若いグリーンの果実はフレッシュな酸味を味わえますし、お好みで色々試してみたいですね。
あの独特な食感を味わった時には、きっとスローなお庭暮らしを堪能した気分に浸れるはずです!
ぜひチャレンジしてみてくださいね。
いかがでしたか?オリーブを庭木として迎え入れようとご検討の方はぜひ、お好みの品種を選んで、育ててみて下さいね。きっと永く愛着の溢れる存在感をお庭で放ってくれるはずです。