ニオイシュロラン コルディリネ・オーストラリス(リュウゼツラン科 コルジェリネ属)
スッと直立した幹にツンと尖った大きな葉、南国にでも自生していそうな雰囲気、見ているだけで熱く乾いた風が感じられそうなニオイシュロラン。
意外と名前が知られていないこともあり「ドラセナ」と呼ばれることもあります。その訳は後ほどお伝えすることにして、名前は知らなくても、インテリアの誌面や街中などで一度は見かけたことがあるのではないでしょうか?
というのも、ここ数年で盛り上がりを見せている南国風のリゾートガーデンの中でも、その立役者として重要な役割を果たしてきたのがこの木だからです。
その個性的ないでたちは、一本植えただけでも、周囲の景色を一変させてしまうほどのインパクト!
さらに一本だけでなく、数本、また株立ちの樹形などを選べば、ちょっとジャングルのような雰囲気も味わえます。
それにしても、いかにも熱帯などに生えていそうに見えるのに、雪が降るような地域でもうまく育てられるの?住宅街に普通に植えて大丈夫?観葉植物ではないの?といった疑問の声もよく聞かれます。
色々と???の多いこのニオイシュロラン、きちんと謎を紐解けば安心してご自宅に迎え入れられるかも。この機会に疑問をきちんと解消してエキゾチックな雰囲気を味わってみてはいかがでしょう。
この「ニオイシュロラン」という変わったネーミング。ランの仲間なのか?それともシュロの木なのか?名前だけ聞くと何の仲間なのか混乱しますね。
でも実はもっと混乱するのが、「ドラセナ」という流通名。ドラセナというと、観葉植物でもよく出回っていますが、確かに姿も似ています。
では何が違うのか? リュウゼツラン科に属している点では同じですが、ニオイシュロランが属しているのはコルディリネ属。ドラセナはドラセナ属に分類されます。そしてニオイシュロラン(別名コルディリネ・オーストラリス)は、ニュージーランドを原産とする常緑小高木。対するドラセナは熱帯アジアや熱帯アフリカ等に50種類が分布する常緑樹です。
ドラセナとの大きな違いは、コルディリネ属は太い地下茎を持っていることなのですが、こればかりは掘り起こしてみないとわかりませんね! 日本に入ってきているドラセナといえば、ほとんどが観葉植物ですのでネットなどで検索してみると違いは一目瞭然です。
そんなわけで、ドラセナは関東周辺での屋外での冬越しはおすすめできませんが、ニオイシュロランの方は耐寒性が高く、マイナス0度前後まで耐えるほか、乾燥にも強いという庭木としてありがたい条件が揃っています。
では何がきっかけで「ドラセナ」と呼ばれるようになったのか? 実はコルディリネは以前ドラセナ属に含まれていたのが一つの要因。この流れから造園関連の業者さんの間では今でも「ドラセナ」として流通していたりします。この木をプランナーや植木屋さんにリクエストしたい場合は「ニオイシュロラン」の和名で伝える方が正解でしょう。
ニオイシュロランには春から夏にかけて先端から伸ばした茎の先に白い小さな花序が集まって咲くのですが、とても強い香りがします。
それをいい香り…という人もいれば、芳香剤のような匂い、と感じる人も。これはあくまで個人差があるので何とも言えませんが、やはりこの名前は花の芳香性からきているとか。また花がシュロにいるため、このネーミングになったとも。
香りには好みがありますが、この白い花、とても迫力があります!幹や尖った葉だけでも十分インパクトはありますが、初夏この花が咲くと、さらにリゾート気分を高めてくれることは間違いありません!
常緑小高木に分類されるこのニオイシュロラン、現地では樹高20mほどになりますが、日本国内の気候では7~8m前後でとどまります。小枝が発生することもないので、あまりスペースを気にしすぎずに植えられる、という利点もあります。
また、イメージ的には光量をたくさん必要としそうに見えるのですが、意外と日陰に耐えます。完全な日陰の環境下ではやはり育ちが悪くなりますが、半日ほどの光が入ればゆっくり生長してくれます。
樹高は本で調べてもネットで検索してみても、実にさまざまだと思います。人の背ほどの小さいものもあれば、すでに5~6メートルに及ぶものもあります。樹形も2本3本と地際から株が出ている株立ち樹形で迫力たっぷりのもの、すっきりとしたシルエットのものなど個性豊か。
それぞれ印象はまちまちですが、花壇などでコンパクトに楽しみたいのであれば、スッと単幹(一本立)のものも素敵です。比較的スペースに余裕があるのであれば、最初から株立ちにして、それぞれの株が寄り添ったりする南国風情を楽しむのもいいですね。
さらに、ニオイシュロランは乾燥や潮風にも強い木。海の近くなど、風が強い場所などにも耐えてくれる貴重な木でもあります。
もし沿岸部に住まいがあって海辺のリゾートを演出したい!と考えているのであれば、ヤシやソテツなどより価格も低めですし、コンパクトにおさまるので玄関先などにもおすすめです。
ただし、台風など強い南風が吹きつけた後は、近年問題になっている塩害の被害に遭うことも。しっかりシャワーなどで水を浴びせかけて海からの潮を流すようにしましょう。
日本の木と違って気軽に剪定してしまうと樹形が崩れてしまいそうなニオイシュロラン、樹高が高くなるにつれどう手を入れていいのかわからない、と思う人も多いようです。でも意外にもそのお手入れはそれほど難しくありません!
もし大きくなりすぎた場合は、ヤシ等と違って成長点を切り除いても他の場所から新芽が出てきます。それを伸ばしてあげれば、また樹形が形作られるので、樹高が高くなっても安心です。
また、あまりに葉がモサモサになって頭でっかちになってしまった、という時は茶色くなった葉をぺりっと軽くめくってあげると簡単に取り除けます。(無理には引っ張らないで下さいね)
枝葉の剪定という点でも、基本は古い葉や花のついた穂を切ってさっぱりさせる程度でOK。それだけでもかなりスッキリします。
それ以外は株元から出てきた新芽を切り除いたりするだけです。もちろん、その子株を気長に育てていって株立ちにするのもいいですね。
植え付けの前に気に留めておいて欲しいのが、原産地ニュージーランドの気候です。日本と暑さの点では大きく異なる訳ではありませんが、湿度と冬の寒さが大きく異なります。日本の夏のような蒸した暑さは現地ではあまり感じられず、カラッとした暑さが特徴。そして冬の積雪はたまにある程度。年間平均気温から見ても温暖で乾燥気味な気候から考えても、ニオイシュロランが苦手とするのは、過度の加湿と過酷な寒さです。
まず加湿という面では、コルディリネ全般がジメっとした環境を嫌います。できれば梅雨時を避けた4~5月の暖かい時期に水はけの良い土に改良して植え付けてあげましょう。
最初の半年前後は地植えとはいえ全く水やりをしないと枯れてしまいますが、乾いてないのに土の状態を見ずに水やりをするのは根腐れの原因になります。
また寒さという点でいえば、例年の関東周辺の降雪量で枯れてしまうことは少ないのですが、何年間に一度の大雪などでは、さすがに葉が痛みます。また重みに耐えかねて折れてしまうことも。
雪が積もってしまったら、早めに葉の雪をどかしてあげましょう!
冬越しでは多少なりとも葉が傷みますが、加湿と大雪さえ乗り越えれば大丈夫。春の成長期に入ると、下の古い葉から順番に枯れ落ちて上へ上へと成長していきます。
少し枯れこんできてもあまり心配しすぎず、枯れた葉は見栄えも良くないので剥ぎ取ってしまって、新しい新芽を育ててあげましょう!
いかがでしたか?もしご自宅のお庭をアジアンリゾート風だったり、ハワイアンリゾート風、熱帯のジャングル風等など、南国っぽくしたいとお思いでしたら、ぜひこの個性的なニオイシュロラン、この機会にぜひシンボルツリーとして検討してみてくださいね。