エクステリア工事を考えるタイミングは大きく分けて2つ、新築を建てる時とお庭に不便を感じた時です。お庭の工事と一言で言っても新築工事とリフォーム工事とでは進め方が少し違ってきます。
ここでは、お庭のデザインを考える前にまずエクステリア工事をどう進めればいいか分からない、どんな感じで進んでいくのか知りたい、という方向けに諸情報を順を追ってお伝えします。
前もって考えておかないと困る意外なことや知っておくとかなり得する(かも知れない)ミニ情報までありますので、ご自身の状況に当てはまる事柄からお読み下さい。
新築住宅におけるエクステリア工事の進め方
家の工事内容は概ね決まったけど、お庭はどうなるのか分からない、ハウスメーカーは何も言ってこないな、そう思っている方はある意味とてもラッキーです。なぜなら、これから如何ようにもお庭の工事を進めていけるからです。無駄な工事を全くしていないまっさらな状態なので、正しい選択をすればお金を一切無駄にすることなく理想のお庭を手にできるでしょう。
お庭でしたいことを考えるよりも先に施工業者を決める
まずはお庭でしたいことを決めてから、工事をやってくれる人を見つけるんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、この流れを逆にすると時間を無駄にすることなく次のステップに進めます。
日々完成に向かって進んでいく新築を見ながら新生活を夢見て、お庭でどう過ごしたいか・何が欲しいかをご家族でああでもないこうでもないと話すのはとても楽しいことと思います。しかし、楽しいが故にお庭の素人のみでの話し合いはいつまで経っても終わりません。
建物はどんどん出来上がっていくのにお庭のプランがまだだと色々と支障をきたします。エクステリア工事を仕切る人がいないと、プランを練る時間が削られていき、雨水・排水桝や水栓の位置が動かせずにエクステリアのデザインが制限されてしまう恐れがあるのです。
エクステリアって新築を担当したハウスメーカーに頼むものなんじゃないの?そう思われる方もいらっしゃると思います。別の記事、エクステリア工事を甘く見てハマる落とし穴3パターンにも書いてありますが、ハウスメーカーは端的に言って、お庭のプロではなく、お庭の利益は微々たるものなのでエクステリア工事に真剣ではありません。なので、エクステリアのことまで任せっきりにしていると安くないお金を払って不満だらけのお庭が完成する可能性が大なのです。
なので、まずはご自身でエクステリア工事を任せるに足る業者を見つけることが先決です。信用できる業者を見つけてから、お庭にかける熱い思いをぶつけましょう。
(業者の違い・選び方についてもエクステリア工事を甘く見てハマる落とし穴3パターンに詳しく記載してありますので、どうぞお読み下さい)
エクステリア工事は一度で全てを終える必要はない
さて、家の竣工までにはまだ時間があり、頼れるエクステリア業者を見つけたら、次はいよいよお庭のデザインを考えていきます。ここでは、お庭にどのようなデザインを組み込むかは省略します。詳しくは各アイテムごとにエクステリアを形作るキーパーツの項目で詳しく書いていますので、必要なものから読み進めてみてください。
エクステリア工事とするということは1から10まで一度にやらないといけないと考える方もいらっしゃるかと思いますが、必ずしもその必要はありません。確かに一度で全てを終えてしまえば、工事にかかる手間を何度も感じずに済みますが、果たして万人が住む前からお庭の理想形が描ききれるでしょうか。
図面だけで生活様式、使い勝手全てを把握し100%満足のいくお庭を作ることはとても難しいことです。ですので、旦那様と奥様とでお庭に対する要望が違う、子どももこれから増えるかもしれない、勧められるままに植栽を盛り込んでしまうとちゃんと管理できるか心配・・・など先の事が不透明な場合は実際に住んでみてから感触を確かめ、二期工事として再度デザインを依頼するのが失敗のない進め方と言えます。
また、逆にお庭でやりたいことはしっかり決まっているが、デザインの希望が多すぎて施工費が足りない・・・そんな時も工事を複数に分けましょう。せっかくお庭で理想の過ごし方を描いているのに、無理に一回にまとめて不満の残る工事になってしまっては本末転倒です。妥協のないデザインを完成させるために、まずは生活に必要な部分から工事を進めましょう。
必要な順から考えていく
工事を一回で終えるにしろ複数に分けるにしろ、まずは日々の生活に欠かせないゾーンからお庭を考えていきましょう。ポイントは、目に触れる回数が多いものから順に、です。
最初に考えるのは玄関まわりです。毎日使うポスト、表札、インターホンに、安全性と美しさを考えるなら門灯もプラスしましょう。これらは常に家族やお客様の目に触れるものなので、よく吟味し、飽きのこない確かなアイテムを選びましょう。エクステリアのスタイルにもよりますが、これらを取り付けるアイテムも欠かせません。美観や目隠しを考えるならデザインウォール、コンパクトさや金額面を重視するなら機能門柱、といった具合です。
次に道路から玄関をつなぐアプローチ、車があるならばカースペースです。アプローチやカースペースに該当する空間は放置していると土や砂利のままなので、雨の度に周囲が汚れてせっかくの新築の美しさを損なう恐れがあります。ですので、人や車が頻繁に立ち入る場所は二期工事に回さずに早めに工事をしましょう。クローズ外構のタイプであれば門扉も必須ですね。
カースペースはカーポートやオーバードア、アコーディオン門扉など、様々なアイテムを加えられる空間です。現時点では必要に感じなくとも、後々やっぱり取り付けたいと思うこともあるかも知れません。気持ちに変化が訪れてもいいように、カースペースはコンクリートで全て固めずにカーポート等を取り付ける可能性のある場所を化粧砂利等で埋めておくのも賢い工事の進め方です。
3番めはライティングや立水栓の有無、場所です。これらは地中・壁に電気配線や水道管を埋設する工事を行う関係上、最初にしっかりと決めておかないと後々コンクリートで固めた床面や壁を壊すことにもなり兼ねません。どちらもあると便利なアイテムなので、是非最初の時点でお庭に取り入れましょう。
4番目に家の周囲を囲うフェンスや擁壁です。意外と優先順位が高くないのかと感じるかも知れませんが、周囲にすでに家が建っている場合、フェンスも各々の家で取り付けていれば仕切りとしてちゃんと機能するので必ずしも必要ではありませんね。少なくともすぐに取り付けないと困るということはなさそうです。
逆に自分の家が先に建ち、周りはまだ建設中・空き地のまま、という場合はセキュリティ上不安を感じるならば取り付けてもいいでしょう。境界ブロックが隣地境界線の真ん中で造作されているならばそのブロック・ブロックの上に取り付けるフェンスは隣地との共有物になるので、お隣が越してから相談の上設置するのも一つの手です。この場合は費用は基本的に折半で済みますが、その分相手の希望(デザインや費用面)も聞かなくてはいけないでしょう。
※中には、うちはフェンスはいらない、取り付けるならそちらのお金でどうぞ、と言う方もいらっしゃるので、ご近所関係がこじれないような話の進め方をしましょう。
フェンスはすでに家の周りにあるけれど、どうもこのままだとお互いの生活空間が丸見えになってしまうな・・・と判断が付く場合は部分的にでも目隠しになるフェンスを取り付けましょう。
フェンスはよく目につく部分はデザイン性の高いもの、人目につかず隣地との仕切りとして必要なだけの裏庭部分は安いメッシュフェンスなど、空間によってフェンスを変えると経済的です。
そして最後に主庭のデザインです。ウッドデッキやタイルテラス、ガーデンルームや天然芝等が該当します。つまり、「お庭でどんな事したい?」とご家族で話す場合は主庭のデザインばかりが取り上げられますが、実は優先順位の低いものから話しているのです。極端な言い方をすれば、なくても困らないものに対して理想・希望を語り続けているので、お庭のデザインがまとまらなくなってしまうのです。
お金を出すのも実際に住んで使用するのも施主様とそのご家族ですが、まとめ役・仕切り役としてデザイナーがいないとお金と手間の掛け方がチグハグなお庭になってしまいます。決して独りよがりにならずにプロとよく相談して工事を進めましょう。
エクステリアのリフォーム工事の注意点
建売住宅や長く住んだ家のお庭のやり直し、これらはリフォーム工事に該当します。工事の流れや優先順位は新築工事の時と基本的には同じですが、リフォームなので解体工事を最初に必ず行います。ここでは、知っておくと得する情報、知らないとトラブルになり兼ねない情報をお伝えします。
解体工事は自分でも出来るし発注も出来る
どんなリフォーム工事もまずは解体工事から始まります。エクステリア業者も大規模な工事は解体工事業者を雇う事が多いので、ここで不要なマージンを浮かす事が可能なパターンもあります。
もしお庭の殆どを壊してからリフォーム工事をするならば、工事の日程をエクステリア業者、解体工事業者の2つと取りまとめる必要があるので流石に個人では難しいですが、例えば既存の大きな植栽を撤去、フェンスやカーポートを撤去など、シンプルな場合は個人でも解体工事を進めることも可能です。お庭のアイテムの殆どがなくなっては生活はしづらいですが、木やカーポートなど独立したものはなくなっても生活にさほど支障はありませんよね。
ですので、解体工事をしてくれる業者を個人で手配すれば費用はぐっと抑えられます。さらにもっと言えば単純な撤去作業は解体業者でなく何でも屋でも対応可能な場合もあります。もちろん何でも屋の方が安く済むので、一つの業者に全て任せずに色々と聞いてみるといいでしょう。
自分の手間も惜しまない、という方でしたらご自身でやれるところまで撤去をするというのもアリと言えるでしょう。生け垣の撤去で実際にある人が行ったのは、根以外の上の部分は全て自分でカットして燃えるゴミに出し、引っこ抜くにはしんどい根っこだけを何でも屋に任せたケースがあります。この場合だと解体・処分も殆どを自ら行っているので、正規の解体業者に頼む何分の一の費用で撤去を終えられました。
使える素材は新しいデザインに転用
建売住宅にありがちな悩みとしては、せっかく新品同様の枕木やポールも、好みや家とのデザインの兼ね合いで撤去するということです。どんなものでもほとんど使っていない綺麗なものを捨てるのはもったいないですよね。
その旨をプロのエクステリアデザイナーに相談すれば、枕木を裏道の敷石として転用したりポールを新しく造作するデザインウォールの一部として組み込んだりと再利用が可能なケースもあります。
もしデザインの関係上同じものを新たに発注する場合を想定して、家の工事でもらった見積もりも手元に用意しておきましょう。庭の工事の見積もりも一緒にファイルされているはずですので。
植栽の移植は枯れ保証無し
職人の話をよく聞いていなかったばかりにトラブルに発展するのが既存の植栽を他の場所に植え替える場合です。しっかり根を張った植物を根切りしてよそへ移植するのは保証は効きません。つまりそれだけ移植は植物にとってストレスの多い行為なのです。移動した途端葉がたくさん落ちて元気がなくなったとしても、それは職人のせいではなく植物の体力の問題だということを認識しておきましょう。
また、植物は移植後葉を落とすのは多かれ少なかれ必ず起こることなので、心配し過ぎることはありません。植物は移動する際、根を切ります。土から水分を吸う根と体の中の水分を外に出す(蒸散)葉は連動しているので、吸う力が低くなった場合は排出する器官を自ら制限します。根が再生すれば葉も元気に茂ってくるので、心配しすぎずに経過を見守りましょう。
エクステリア工事の概算
エクステリア工事を考える人にとって一番知りたいことなのに、どの本やホームページでも明言されていない値段のこと。金額が明記されていないのは、エクステリア工事がすべて一点ものであり、決まった価格がないことに尽きます。
ポストや表札はエクステリア商品なのでどこで買ってもほぼ一緒の金額ですが、アプローチやデザインウォールなどの造作物である場合は値段は様々な要因で上下します。職人の単価、エクステリア業者のマージン、地域の相場はもちろん、素材の希少性も関わってきます。一昔前はあまり注目されずに余っていた木材も、大人気になれば値段が高騰し品薄になるように、時が経つことでも値段は変わっていくのです。
また、家の条件も値段が変動する理由の一つです。残土が出れば他の場所まで運んで捨てます。土がどれだけ出るかは現場によってマチマチですし、廃棄にかかる金額も県や地域によってバラバラです。重機が使えれば簡単な工事も、立地条件の関係で敷地内に重機が入れず、全て人力で工事をすることになれば金額は跳ね上がります。他にも様々な遠因があるため、コレを作ったら全国どこでもこの値段、という話は出来ないのです。
それを踏まえた上で、ここでは家の値段から逆算したエクステリア工事の概算をお伝えします。
※これは飽くまで極々単純な概算であり、デザインやこだわり、地域の相場やエクステリア業者の設定価格の差によって簡単に金額が上下に変動することを念頭に置いてください。
家の価格から逆算したエクステリア費用の算出(土工事、解体工事、諸経費含まず)
エクステリアの坪単価は家の価格の約1/6ほどと言われています。ですので、お庭にかける費用を考える場合は、建物価格を目安にするとあなたの家に相応しい外構費用が分かります。
例えば2000万円の建物の場合、最低限の機能が揃っていればOKという場合なら5%の100万円。家にマッチするエクステリアが欲しい場合は、8%の160万円。外観の充実はもちろん、主庭で思い通りのガーデンライフを堪能したいのならば12%以上の240万円〜といった具合です。
最低限の工事の場合
まず生活に必要なポスト、表札、インターホンに門灯。これらを全て機能門柱にまとめて施工費込みで15〜20万円。次に駐車場とアプローチ。面積にもよりますが、コンクリート多めを基本に、部分的に乱形石などのデザインも加えて約30万円。
家の外周3方を囲うブロック塀3〜4段積み+安いメッシュフェンスT-8(高さ80cm)を取り付けて40〜50万円。合計85〜100万円に土工事等が加算されます。
機能的かつデザイン性も持たせた場合
上記の概算を元に少しずつ金額を上げていきます。ポスト等のアイテムを取り付けるのは機能門柱ではなく家の顔となるようなデザインウォールにチェンジし、合計25万〜30万円。アプローチはレンガや石系の素材でしっかり作り、駐車場の一部も石等を貼って約40万円。安めのカーポートを加えて施工費込みで約30万円。
フェンスも人目につきやすい所のみ木目のラッピングを施したデザイン性の富んだフェンスを加えて合計50〜60万円。主庭にガーデンアップライト1基と自動タイマー、立水栓と水受け、シンボルツリー1本、天然芝を敷き詰めて約15万円。締めて160〜175万円+土工事等です。
思い通りのデザインを再現した場合
ここまでくるともうどれだけこだわるか、費用を出せるかの話になってきます。ウッドデッキやウッドフェンスはサイズはもちろん天然木か人工木かで値段は大きく変わってきます。タイルテラス付きのガーデンルームなら100万円から上は200万円を優に超すでしょうし、展示場で採用されるような見栄えのするカーポートは200〜300万円、オーバードアやシャッターゲートも皆数百万円はします。
植栽も枯れ保証込みで主庭全体を美しく彩れば50〜100万円はザラですので、デザイナーとよく相談して理想を叶えるにはどれくらいの費用が必要か、ロマンとソロバンを同時に考える思考が大事になってきます。
まとめ
エクステリア工事は夢想の実現ではなく、期限・費用の上限が決まったれっきとした工事です。リミットから逆算して欲しいもの、必要なもの、いつでもプラス出来るものを明確に分けて工事の計画を立てるのがベストと言えるでしょう。また、本やネットを頼りに独学で勉強するよりも、一刻も早くプロに相談をする方が理想のお庭への近道です。
プロも様々な意見、私見を持っているのが常なので、遠慮無くセカンドオピニオン、サードオピニオンのつもりで沢山の意見を他社から集めましょう。手間を惜しまずに努力した方だけが、理想のお庭を手にすることが出来るのです。