
樹木の葉を透過した光はお庭を透明感溢れる空間に変えてくれ、色々な形の葉を持つ樹木を植えると軽快なリズムがお庭に生まれます。ここでは葉や花、幹の色・形・質感などを植栽デザインに活用する方法をご紹介します。
シンボルツリーの植樹は新築・リフォーム工事のタイミングでないとなかなか難しいかもしれませんが、下草や地被植物等は比較的簡単に取り入れられますので、お庭に新しい魅力をプラスしたい方は是非取り入れてみてください。
透ける葉で庭を作る
光で葉が透ける樹木でお庭を構成すると、軽く明るい印象になります。アブラチャン、ナツツバキやハクウンボクなど、葉が薄い樹木は、特に光を透かしやすい特性を持っています。樹種ごとに差があるものの、ほとんどの落葉樹の葉は薄いので、軽さや明るさが求められるお庭では、落葉樹を効果的に使うことがポイントになります。
葉に光を透過させる場合、朝日などの東から南にかけて差し込む日差しと、西日など南から西にかけて当たる日差しに分けて検討しましょう。どちらの光を取り込むかで、お庭の印象は大きく変わります。やわらかな光を透かし、落ち着いた印象のお庭を作る場合、西日より朝日が葉を透過するように植樹しましょう。
光を透過させたい樹木の背後に別の樹種を植えたり壁を設置する場合は、50cm以上の空間を設け、光が樹木全体に当たるよう植樹すると、葉の透明感を効果的に演出できます。複数の樹木を植樹する場合は、樹木を見る位置と光が透過する線上に、同じ高さの樹木の葉が重なり合わないようにするなどの工夫が必要です。
明るい葉で庭を作る
樹木は、花が咲いたり紅葉したりするなど、1年を通して様々な色を見せますが、ほとんどの期間は緑の葉を付けています。したがって、植樹のデザインでは、緑の明るさを意識しながら樹木を選択し、配置することが重要になります。
葉の明るさは、葉色の明度や彩度のほか、光を透過・反射しやすい葉質であるか否かで決まります。葉色は、色が薄いほど光を透過させるので明るく感じます。葉質は、葉の質感が光を反射しやすい革質のもの(照葉樹)ほど、明るく輝いて見えます。
シラカシなど、薄い色の葉を持つ樹木でお庭を構成すると、庭は明るく軽やかな印象になります。例えば、建物の陰で暗くなりがちな北側の空間でも、明るい葉の樹木を使うことでほのかな光が差し込んでいるような雰囲気になります。
明るい色の葉の樹種には、オーレアや斑入りといったものがあります。例を挙げると、サワラの園芸種でもあるフィリフェラオーレアシルバープリペット(セイヨウイボタノキの斑入り)、グミギルドエッジ(グミの斑入り)などです。
色の濃い葉で庭を作る
濃緑色の葉を持つ樹木を比較的多く使用すると、落ち着いた印象のお庭を作ることが出来ます。ただし、葉色の濃い樹木は、多用し過ぎるとお庭全体のイメージが重くなり、陰気な空間にもなりやすいので注意しましょう。葉色の濃い樹木は、どんなに多くても庭木全体の80%以下に抑えるように意識すれば間違いありません。
また、濃緑色の葉を持つ樹木は視線が集まりやすいので、上手く配置すると狭いお庭でも奥行き感を出すことが出来ます。例えば、お庭を見る場所を基準に、一番奥にイヌマキなどの暗い色の葉を持つ樹木を置き、順にガマズミなどの明るい葉色の樹種を植樹すると、お庭が広く感じられます。
紅葉が楽しめるお庭
秋の紅葉は、春の花期に比べて期間が長いため、お庭をデザインする上で重要な要素になります。実際に、日本庭園の多くは春の花よりも秋の景色を重視した配置になっています。紅葉は、赤くなる紅葉と黄色くなる黄葉に大別できます。ただし、より細かに見ていくと、赤茶色(シマサルスベリ)や赤銅色(カシワバアジサイ)、薄黄緑色(アオギリ)に色づく樹木もあります。
植栽する際は、同色の濃淡だけでなく、赤色と黄色など、異なる色を混ぜると立体的になり、「綾錦」と言われるような空間になります。さらに、紅葉・黄葉の背後に常緑樹を配置すると、色の対比がよりはっきりとし、見栄えが良くなります。
樹木を美しく紅葉させるコツは、1日の昼夜で寒暖の差があること、土壌に水分が十分にあることが挙げられます。昼夜を問わず暖気や照明が当たる場所、乾燥気味の場所では綺麗に紅葉しないので、植樹の際は注意しましょう。
新芽が美しく映えるお庭
落葉樹の新芽の多くは、明るく淡い緑色をしています。したがって、新芽が映えるお庭を作る場合、落葉樹を基本構成とすると良いでしょう。特に、カエデ類は葉の切れ込みや薄さに変化があるため、より美しく感じられます。
新芽の美しさを際立たせるには、樹木を見た時にいつも新芽に日が当たるような場所に植樹することがポイントになります。ただし、新芽は柔らかく薄いため、屋上に吹く風で乾燥して綺麗な色にはならないので、屋上庭園にはこうした樹木を植えることは避けたほうが良いでしょう。
新芽の色は、緑色だけでなく変わり葉もあります。例えば、オウゴンマサキやカエデの園芸種であるウコンは、芽吹きから春にかけては黄色で、夏になると緑色に変わります。また、同じくカエデの園芸種であるイイジマスナゴは、芽吹きは紅色に、夏になると日陰にある葉が緑気味になる。これらをお庭に取り込んで、知っめの色の変化を楽しむのも面白いでしょう。
きらきらと葉が輝くお庭
明度の高い色の葉だけではなく、葉の表面が光を反射して葉がきらきらと輝く樹木を使っても、明るく輝くお庭を楽しむことが出来ます。光をよく反射する樹木は、歯の表面が革質な常緑広葉樹に多く、代表的な樹種はツバキ類やサザンカ類です。特に和風のお庭で、背景木として用いられるモッコクの葉は、光を反射します。
こうしたお庭を作る場合は、葉に光が当たり、それを眺められる場所であることが望ましいです。太陽光が当たりやすい北側、東側、西側のお庭が向いています。また、キンマサキやグミギルドエッジのように、葉に黄色い斑が入る樹木は、光が当たらなくても葉色によって輝いている印象を与えてくれます。
光を十分に確保できないお庭では、黄色い斑入り種や黄色い葉のオーレア系の樹種を用いることで、光に頼らずに同様の効果が得られます。ヤナギの仲間のギンドロも、葉の裏が真っ白な毛で覆われており、葉が風に揺れると表の緑色と裏の白色が交互に現れ、輝いているように見えます。
いつも葉色が楽しめるお庭
樹木の葉の色は、緑に限ったものではありません。日本庭園ではあまり扱われませんが、1年を通して秋の紅葉のように葉が赤や黄色の樹木もあります。これらの葉はカラーリーフと呼ばれるもので、ヨーロッパの庭園ではよく使われます。日本でもイングリッシュガーデンが注目されてから比較的使われるようになりました。
カラーリーフの色の系統は、大きく分けて青色系・銀色系・黄色系・赤色系の4つです。より細かく分類すれば、赤色系でも実際は銅色や紫などにも分けることが出来ます。
カラーリーフは、緑色の葉の中に少しだけ入れることがポイントです。色の対比で、緑の葉がより鮮やかに見えるようになります。また塀の近くなど、植栽が集まることで平面的な緑の壁に見えるような場所でも、カラーリーフを入れることで立体的に見せることが出来ます。
コニファーは、葉の色のバリエーションが多いため、カラーリーフをテーマにしたお庭を作る際に適しています。ホルトノキやテイカカズラは、ところどころ赤い葉が出るので取り入れるとカラフルな印象を与えてくれます。アサギリソウなど銀色系の地被植物類は、少ないと浮いた印象になり効果が発揮されないので、最低でも3株以上使うと見栄えがするでしょう。
葉の模様を楽しむお庭
斑入りなど、葉に模様がある樹木を植栽する場合、花をあしらうように常緑樹と混ぜて植樹しましょう。こうすることで、暗く重い印象になりがちな常緑樹主体のお庭に色のリズムが生まれ、お庭の雰囲気が明るく軽い雰囲気になります。
斑のバリエーションは様々で、葉の緑が緑以外の色になるものに、ヘデラカナリエンシスバリエガータ、グミギルドエッジなどがあります。また、葉の中に点々と斑が入るナカフアオキや、葉の半分が白くなるハンゲショウ、葉の色が白とピンクになるハツユキカズラなども斑入りの樹木です。
葉擦れの音が楽しめるお庭
風が吹くと、小枝や葉が擦れ合い音を出す、暑い夏の昼下がりにはこうした木々が奏でる風音が涼やかな雰囲気を作ってくれます。
葉擦れの音が出やすい樹種とは、葉が厚いものや葉が重なって枝につくもの、葉を支える葉柄がしなやかなものがあります。代表的な樹木は、ソヨゴです。このソヨゴは「そよぐ」を語源に持つ木で、硬質な葉が風に揺れてさわさわと音を立てることからこの名がついたとされています。
枝が少し柔らかく枝垂れるようなポプラやシダレヤナギ、細かい葉が密生しているクロチクなどのタケ類も音が出やすい樹種といえます。マテバシイは葉が大きく音が出やすいので、風が強い場所に植えるとややうるさく感じてしまいます。
これら葉擦れの音が楽しめる樹種は、お庭に多く取り入れすぎると常に音のする落ち着かないお庭になってしまいます。このタイプの木々は全体の植栽の3割程度に留めておいた方がいいでしょう。
葉の香りが楽しめるお庭
葉の香りが楽しめるお庭は、見るだけではないお庭の楽しみ方ができるので昔から人気のあるデザインの仕方です。葉は花のように自然に香りを発散するのではなく、何かと擦れ合って香りを出すものがほとんどです。そのため、体が触れやすい場所に植樹することがポイントです。
例えばクリーピングタイム等の地被植物は、通路脇のような歩いた時に足が触れやすい場所に植えると効果的です。その他にも風の通り道等、風で葉同士が擦れ合う場所にも植栽に向きます。ただし、ローズマリー等の香りが強すぎる受取の場合、積極的に香らせるよりも、ふとした時に体の一部が触れて香るくらいが効果的です。
葉の香りが楽しめる樹種の代表的なものは、クスノキでしょう。クスノキ科の樹木には、クロモジやゲッケイジュ等、香りが楽しめるものが多くあります。この他、セイヨウジンジンボクも、樹木全体に微かな芳香を持ちます。
なかには枯れ葉が香るものもあります。カツラの枯れ葉は甘い香りがしますし、サクラの枯れ葉は踏むと桜餅のような香りがします。
似た質感の葉でお庭を作る
似た質感の葉を持つ樹木を植栽すると、お庭に統一感を与えることが出来ます。その一方で、お庭の景色は単調になってしまう恐れもあります。そこで、見た目や印象は似ているけど花の咲く時期や実の形・色が違う樹木を組み合わせることで、お庭に変化を持たせましょう。
例えば、針葉樹のコニファーガーデンは、冬に若干の紅葉はあるが、落葉もせず派手な花も咲かないことから、1年を通してほぼ同じ景色のお庭になります。ここに同じような質感の葉を持つ別の樹種を混ぜて植えることで、花や紅葉といった要素を違和感なく取り込むことが出来ます。
コニファーに似た樹種には、広葉樹では葉がとても細く針葉樹に見えるジャノメエリカやマキバブラシノキ、ギョリュウなどがあります。これらと合わせて植えることで、葉の質感のバリエーションを広げることが出来ます。また、ジャノメエリカやギョリュウ、ローズマリーは花をつけるため、常緑のコニファーガーデンに色の変化を与えることが出来ます。