
一方で工事を終えてから長く時間が経っているはずなのに、劣化が緩やかな床面も確かに存在します。なぜ同じコンクリートの施工で、そこまで差が出てきてしまうのでしょうか。ここでは、シンプルでありながら奥が深い、コンクリート施工の注意すべきポイントをご紹介していきます。
仕上がりによって変わるコンクリートの出来
コンクリートはもともと個体ではなく、「生コンクリート(生コン)」と言われる液状の状態で工場から各工事現場に運ばれてきます。職人が生コンを流しこむために作る「型枠」の中に生コンを入れて、コンクリートの施工が始まりまるのです。
まず、決められた厚みに生コンを型枠内に流し込みます。液状といっても生コンは強力な粘性を持っているので、とても重労働です。この際、コンクリートの厚みを均一にするために前もってレベルという高さを測る機械で調べるので、コンクリートは広い面積でも一定の厚みを保つことが出来ます。
次に行うのは、コンクリートの締固めです。この工程がコンクリート施工において一番重要な作業です。締固めはバイブレーターという振動機を使い、コンクリートに振動を与えて行います。振動を与えることで生コン内部に入り込んだ空気を外へ出し、生コンの密度を高めます。こうすることで生コンに含まれた骨材が均等に分布され、コンクリートが本来持つ強度をしっかりと引き出すことが出来るのです。
締固めを終えたら、次は「パタパタ」という道具を使って、生コンの骨材を内部へ沈ませます。生コンはセメント、水、砂、骨材(砂利)で構成されています。その中でも骨材は表面に浮き出やすいので、表面の仕上げを行う前に沈める作業が必要になります。このパタパタを行うことによって密度の高い状態へと変化し、耐久性に優れたコンクリートになります。
次の作業は「均し」という作業です。この作業が最も職人の腕の良し悪しが分かる作業で、表面を綺麗に仕上げるには熟練の技術が必須です。パタパタによって浮き出たペースト状のセメントと砂をコテで平らになるように撫でていきます。
自分の足跡を消しながら表面をコテで撫でていき、均しを終えるとしばらく時間をおきます。生コンの固まる速度に合わせ、再度仕上げ作業に入るのです。均し作業にはプラゴテと金ゴテの2種類のコテを使用します。プラゴテでセメントを浮き上がらせ、浮き上がってきたセメントを金ゴテで撫でて表面を仕上げます。これらを使い、最低でも2回は同じ作業を繰り返します。
複数回仕上げをするのは、後のひび割れや表面のざらつきを抑えるためです。生コンが固まる時間は季節によって違いがあるので、仕上げの回数が違ってきます。温度の高い夏場はコンクリートが早く乾いて硬化するので仕上げ作業は2〜3回ですが、冬場は条件が逆なので作業回数は3〜4回に増えます。
このようにコンクリートの施工は実は多くの工程があります。その工程のいずれも外せない大事な作業なのですが、業者によってはこの作業を短縮して行うところが残念ながらあります。それは安さをウリにしているエクステリア業者です。
彼らは工事費用の安さを前面に押し出して契約を結びますが、それゆえ一つ一つの現場にしっかりと手間ひまをかける事ができません。丁寧に仕上げていたら現場の工期が間に合わず、作業スケジュールが破綻してしまうからです。それ故、安い業者にまかせると表面が凸凹、すぐヒビが入るなどの悲惨な結果につながります。
なので、コンクリートの施工を頼む場合は最安値の業者よりも、しっかりと対応してくれるエクステリア専門店を選べば長期的に見て得と言えるでしょう。
施工の技術によって生じるクラック(亀裂)
エクステリア工事においてコンクリート施工は切っても切れない間柄ですが、コンクリートを打設した床面にクラック(亀裂)が入っているものは決して珍しくはありません。コンクリートに亀裂が生じるのは、ちゃんと理由があります。
完全に亀裂を防ぐことは不可能ですが、コンクリートの性質を熟知している施工者ならば、亀裂が入る恐れを最小限に抑えて打設することは出来ます。ではなぜコンクリートに亀裂が入るのでしょうか。
コンクリートに亀裂が生じる一番の理由は、鉄筋が入っていないからです。コンクリートの性質は圧縮力には強いけれど、引っ張る力つまり張力には弱いのです。つまり、コンクリートのみでは1年と経たずに亀裂が入ってボロボロになってしまいます。
張力に弱いということは、コンクリートの上に車が乗り上げると、タイヤの位置にのみ荷重が加わります。土ならばそのまま沈んで重さを逃しますがコンクリートは沈むことはないため、ストレスが加わった場所にダメージが蓄積されて割れていくのです。
またコンクリートは厳密に言うと温度によって伸び縮みします。夏は熱によって伸び、冬は寒さによって縮むのです。この伸び縮みもひび割れの大きな原因になり得ます。
そのため、張力に強い鉄筋をコンクリートの内部に入れることで、コンクリートの弱点である張力を補う事が出来ます。この相互作用によって生まれたものが「鉄筋コンクリート」です。
鉄筋コンクリートはあらゆる構造物の中で最も強度が高く、長持ちします。地震が来ても耐えられる構造なので、もしもの際も安心です。対して、昔に作られたコンクリートの駐車場やブロック塀は鉄筋が入っていないものが非常に多いです。見るからにボロボロで今にも崩れそうなものは鉄筋が入っていない可能性があります。
(今となっては根拠はありませんが、昔は九州地方は地震の発生率が低いとみなされていたので、昔に施工された駐車場もブロック塀も鉄筋が入っていないものばかりです。ニュース映像で頻繁に放送されていた、ブロック塀が根本から壊れて倒れていたのは鉄筋が入っていれば防げた事象です)
エクステリア工事を依頼する際は、鉄筋の有無を必ず確認しましょう。駐車場のコンクリートで使用される鉄筋は、ワイヤーメッシュというタイプの鉄筋を使用します。カースペースのコンクリートならば、ワイヤーメッシュを入れるだけで亀裂は最小限に留めることが出来ます。
しかし、コンクリートを打設する際にしっかりと仕上げを行わないと亀裂が生じる可能性が出てきます。コンクリートは硬化する際、水分が蒸発したりコンクリー下の地面に浸透したりして抜け、その抜けた水分の量だけコンクリートは沈下します。基本的には均等に沈下するのですが、ワイヤーメッシュが入っている場所は入っていない場所よりも沈下しづらいので、その落差によって歪みが生じ亀裂が入る場合があります。
これを回避するために、前述の仕上げ作業を2回以上行うのです。幾度も仕上げ作業を行うことでコンクリートはしっかりと固まり、亀裂が入る可能性が低くなります。
なので、施工したばかりのコンクリートに亀裂が生じるのは職人の技術不足にほかなりません。施工した後でやり直すのは難しいので、予防策としてエクステリア業者の過去の物件を見学させてもらったり、現場に入る職人にコンクリート打設のスケジュールを聞いて職人の手順を自身でチェックする、という行動で防げるでしょう。
ただ、どんなに丁寧に仕上げをしても、鉄筋コンクリートにも寿命があるので(およそ70年)いつかは必ず亀裂が生じるということも忘れないでおきましょう。
雨の日はコンクリートの施工を延期すべき
型枠に流し込んだコンクリートの表面を仕上げる時、コンクリートはまだ固まっていない状態です。その状態で雨が降ってしまうと、雨水によってセメントペーストが流されてしまい、コンクリートの表面が均一ではなくなってしまいます。
また、雨に打たれた箇所は雨水が混ざってしまうため、コンクリートの本来持つ強度が低下してしまう可能性があります。コンクリートに余計な水分が混ざってしまうと表面にヒビが入り、最悪の場合は大きな亀裂が生じることもあります。
コンクリートを工場で製造する差異、セメントと水の比率は機械でしっかりと制御された上で練られています。これを水セメント比と言い、この水セメント比が守られてこそ本来の強度が引き出せるので、施工時に余計な水分が入ってしまうと設定通りの硬さが発揮できなくなってしまうのです。
それ故、雨天であったり打設した数日以内に雨になると分かっている場合、通常の業者はコンクリートの打設を延期します。工期に追われている格安の業者、基本的な決まり事を守らない悪徳業者にひっかかないよう、コンクリート工事に入る前に業者の考え方や工事における姿勢を見抜きましょう。
まとめ
コンクリートはどのエクステリア工事でも行っている基本的な工事ではありますが、決して簡単な工事ではありません。また、ポストやフェンスの取り付けと違い、気に入らないからといって容易にやり直すことも難しい工事なのです。エクステリア工事を後悔しないよう、依頼する前に業者の良し悪しを見ぬく正しい目を養って工事を頼みましょう。