
1つは、土木工事を行うのに必要不可欠な「土木施工管理技士」や、造園の知識や技術を保証・証明してくれる「造園技能士」などの国家資格です。国家資格とはその名の通り、国から発注される仕事である公共事業を請け負うために必ず必要な資格です。
もう1つは、エクステリアをプランニングする「エクステリアプランナー」やブロック塀の安全や施工技術を診断する「ブロック塀診断士」などの民間資格です。民間資格は仕事を受注する上で必ず必要であるわけでありませんが、所有しているということはそれだけ技術や知識の習得に専念してきた証拠にもなります。
特に、エクステリアプランナーは外構工事に特化した資格なので、この資格を有しているということは、エクステリアの基礎知識は勿論のこと、プランの提案や設計、現場管理の能力などにおいて資格を持っていない営業マンよりも優れているということです。
ここではエクステリアプランナーをはじめとする様々な民間資格のご紹介をしていきます。
エクステリアプランナー
エクステリアプランナーとは、「公益社団法人:日本エクステリア建設業協会」が定めている民間資格です。この組合は、全国で行われている外構工事のクオリティの向上を図るのと同時に、デザインや利便性なども併せて指導する団体です。そのため民間資格であっても豊富な知識と経験がなければ取得できず、決して楽に取得できる資格ではありません。
エクステリアプランナーの業務は、外構と建物のデザインのバランスをプランニングするだけでなく、周囲・街並みの景観に合わせたデザインを提案する能力も求められます。地域によっては、「まちづくり条例」や「景観条例」などが指定されている都市もあります。それらにしっかりと適応しながらも、居住者の快適性や見栄えも考慮してプランニングしていきます。
また、エクステリアプランナーには2級と1級とがあり、それぞれ受験内容・レベルが異なります。
2級エクステリアプランナーの場合、住宅の外構工事において、その設計や提案をする担当者が基本的な外構の知識を身につけているかどうかの認定資格です。エクステリア工事を行うにあたって、一定水準の知識を問われるだけなので、エクステリア業界に身を置いている方以外でも受験が可能です。誰でも受けられる敷居の低い資格なので、合格率は70%と高めです。
一方、1級エクステリアプランナーの場合は高度な専門知識を要求されます。施工に関連する法規や施工計画、製図の知識、設計図の描き方などエクステリア工事の管理に必要な知識や技術が問われます。また、受験資格が設定されているため、その基準を満たしていないと受験をすることが出来ません。基準は、2級エクステリアプランナーの免許を取得した後に3年以上の実務経験が必須です。または、2級もしくは1級建築士の資格を所持していなければなりません。合格率は約45%と、半数を切ります。
エクステリアプランナーは年に一度しか受験出来ず、試験に落ちたら次回はまた来年になってしまいます。エクステリアプランナーはしっかりと勉強しないと受からない上、取得のタイミングの時期が限定されています。これが、エクステリア工事に携わっているにも関わらず沢山のエクステリア事業者が資格を有していない理由です。
ハウスメーカーやホームセンター等の下請けとして業務をあたっている職人、プランナーならばこのエクステリアプランナーという資格はあまり必要ではないでしょう。彼らは直接お客様と話し合い納得させることが仕事ではなく、元請業者が依頼・設計した通りの仕事を遂行すればいいからです。
しかし、エンドユーザー(直接依頼してくるお客様)から工事の依頼を得たい会社は、2級ではなく1級の資格を有しているべきでしょう。お客様の要望に応えるだけの提案力が要求されるからです。また、1級エクステリアプランナーはそれ自体が大きなステータスとなるので、信頼感と安心感を獲得するツールにもなり得ます。
あくまでも民間資格であるエクステリアプランナーですが、この資格を有しているということはアフターケアも万全で優れた提案力を持つ証拠でもありますので、依頼先を数社で迷っている場合はこの免許を取得しているプランナー・職人が在籍している会社を選んだ方がいいでしょう。
ブロック塀診断士
自然界に存在する石や土などは、長い年月が経ってもそのままの形を長く保ち続けます。しかし、人工的に作られた構造物は時間の経過とともに劣化し風化していきます。
例えば、コンクリートは時間とともに黒ずんできたりひび割れてきたりします。これがカースペースやアプローチであれば、美観が損なわれるだけなので日常生活に支障はでません。しかし、土留や建造物の周囲を囲う塀の場合、緩やかに劣化していくとともに、強度も減退してきます。特に、ブロック塀は劣化していくと倒壊の恐れがあり、大変危険です。
日本建築学会の調べでは、ブロック塀の寿命はおよそ30年と言われています。そのため作られてから年数が経過する毎に、ブロック塀は確実にもろくなっていきます。ただ、目視できる状態でない限り、ブロック塀の劣化を判断することは素人には難しいです。そこで活躍するのが、ブロック塀診断士と呼ばれる存在です。
ブロック塀診断士とは、平成7年10月「建築物の耐震改修の促進に関する法律(法律123号」が制定されたのを受けて生まれた資格です。その役割は、既存のブロック塀の状態を診断・性能評価し、危険箇所を発見して改善することです。また、台風や地震などの大きな自然災害が発生した際に、ブロック塀が倒壊する災害を未然に防ぐ事を目的とします。
ブロック塀は本来、建築基準法に定められた通りに施工しなければなりません。しかし、一般家庭から依頼されるエクステリア工事のような民間工事の場合、調査は特別行われないため、その基準を満たしていない倒壊の可能性を孕んだブロック塀は多く存在しています。
ただ、大半の人はその重大な事実を知らないため、経年劣化や強度の事は念頭にありません。しかし前述の通り、ブロック塀は必ず月日とともに劣化していきます。そのことに気付かないで大型の自然災害に見舞われた場合、ブロック塀が倒壊して付近の建物に被害をもたらしたり人命を奪ってしまう可能性があります。
そこで必要になるのがブロック塀診断士というわけです。この資格を取得している人ならば、外観だけでは分からないブロック塀の状態を確認することが出来ます。また、新規のエクステリア工事の安全基準遵守は勿論、既存のブロック塀の調査・点検を行い家や周囲の安全を保つことが出来るのです。
ブロック診断士の資格を取得するには、「公益社団法人:日本エクステリア建設業協会」が開催する講習会を受講し、修了試験で合格しなければなりません。合格後は、協会へ登録することでブロック塀診断士として活動出来ます。(平成25年度より、ブロック塀診断士は5年毎の更新登録が義務化されています)
※ブロック塀診断士は受講条件が定められており、以下のいずれかの資格を取得していなければ申し込みが出来ません。
1・2級建築士、1・2級建築施工管理技士、1・2級造園施工管理技士、1・2級土木施工管理技士、タイル・左官・ブロックの技能士、1・2級エクステリアプランナー、建築コンクリートブロック工事士のいずれかです。
この資格を取得していなくてもブロック塀の施工は可能です。しかし、ブロック塀診断士の資格を有していれば、携わるお客様から得られる信頼感は格段に上がります。熊本の大地震の際も入っているべき鉄筋が入っていなかった等、地震とブロック塀倒壊による被害はワンセットと考えられている現在こそ、被害を未然に防げるブロック塀診断士という資格の重要性が再認識されつつあります。
建築コンクリートブロック工事士
エクステリア工事では、コンクリートブロックを用いた構造物が多く施工されています。コンクリートブロックは施工が簡単で見栄えもよく、何より値段が安いからです。
活用方法としては、主に隣地との境界線状の仕切りから土留め、花壇など用途は多岐にわたります。そのメリットから、エクステリア工事をしたことのない素人の方も「自分でやったほうが易く済むし、DIYとしてやってみようか?」と考える方もいらっしゃいますが、コンクリートブロックは積み方を間違えると、倒壊して思わぬ被害をもたらしてしまう恐れがあります。
花壇造作のような小規模で高さがない工事ならまだしも、高さのあるブロック塀を造作となると、知識と技術がないと大変危険です。
ブロック塀は、建築基準法で定められた施工方法で造作すべき構造物です。しかし、公共工事ではない民間工事の場合は特別な検査はないので、基準を満たしていない危ないブロック塀が町中に多くあります。
素人がブロックを積み上げる場合、正しい積み方の技術を習得する必要があります。独学で積み上げてしまうと、簡単に壊れたり倒壊したりして人に怪我を負わせてしまう恐れがあるからです。先の熊本地震でも大規模な倒壊があったように、取り返しの付かない事故にもつながります。
なので、ブロックを高く積み上げたい場合は決して自力で行わず、エクステリア業者に任せるのが無難でしょう。中でも、建築コンクリートブロック工事士の資格を取得している職人であれば、仕事に間違いはありません。
建築コンクリートブロック工事士とは、コンクリートブロック関連の工事において、材料・構造・施工技術・原価管理などの専門的な知識と技術を有している技術者に与えられる資格です。
この資格を有することで、コンクリートブロックの知識と技術をしっかり身につけた専門家であると認められるのです。構造上安全な設計を行うのは勿論、十分な施工管理も出来るようになります。
建築コンクリートブロック工事士もまた、「公益社団法人:日本エクステリア建設業協会」が定めている民間資格です。受験資格は25才以上であれば誰でも受験可能です。この建築コンクリートブロック工事士の資格を取得すれば1級エクステリアプランナーやブロック塀診断士の受験資格を得られるので、外構工事関連の資格を取ろうとするのであれば、まずはこの資格から目指すことをおすすめします。
ただ、この資格もまた民間資格なので、建築コンクリートブロック工事士の資格がなくても正しい工法でブロック塀を施工して仕事を行う事は誰にでも可能です。建築コンクリートブロック工事士の資格を取るメリットは、依頼者の信頼を勝ち取ることの1点に尽きるでしょう。無資格の会社と比較された時に選ばれる可能性が高まるので、取っておいて損のない資格の1つと言えます。
まとめ
外構工事において民間資格は決して必要な資格ではありません。ですが、資格を有することで他社との相見積もりの際に優位に立てることもありますし、何より日々なんとなくやれているデザインや工事を改めて勉強することで造詣が深くなります。
知識をより深めることで言葉や技術に重みも増しますので、エクステリア業界を目指す方は勿論、エクステリア関連の仕事を既にしている方も取得をお勧めします。