あなたはデザインウォールという言葉をご存知でしょうか?聞いたことはあるしなんとなく言っている意味は分かるけど、普通の壁との違いはイマイチ分からない、そんな方もいらっしゃると思います。エクステリアにおけるデザインウォールとは、近年作られた造語で、簡単にいえばカッコよくデザインされた門袖壁のことを指します。これはまだ明確な定義付けがされていない新語なのでメーカーや業者によって考え方はマチマチですが、前庭の主役になるような素敵な壁、と考えていただければ大丈夫です。
では一体、デザインウォールであることの意義、メリットはなんなのでしょうか。普通のブロック塀ではいけない理由は?全ての面を壁で覆われている家はどうデザインするべきなの?人が壁に求める意味や掛けられる金額はまさに千差万別、一つとして同じ条件のものはありません。ここではデザインウォールの何たるかを知り、ご自身のお庭に当てはめていくことで、どのようなデザインウォールがベストな選択なのかを探る事ができます。あなたの家に相応しい、あなただけのデザインウォールを一緒に見つけていきましょう!
デザインウォールを作る理由
まずはデザインウォールを作る理由を探っていきましょう。普通のブロック塀では得られない効果や上手な費用の掛け方、魅せ方を学んでお庭に取り入れるだけで、家全体の印象が格段にアップします。新築の方もリガーデンの方も是非取り入れて、美しいお庭づくりの第一歩を踏み出しましょう!
意匠性アップでアイストップ効果
まずデザインウォールに求められるのは意匠性、つまりデザインの高さです。凝ったデザイン、美しい外観はご家族はもちろん訪れるお客様の目に留まります。人は進む方向、動線に注意を一番向けるので、その動線上にデザイン性の優れたものがあることで、お庭全体の印象をいいものと認識します。細部にまで一辺の隙もなく費用をかけて完璧なデザインをするのも素敵ですが、このように人の目に触れやすいものを優先的にデザインすることで、費用対効果はアップします。
また、意匠性が向上するということはアイストップ効果も期待できるということです。アイストップとは造園用語で、人の注意を向けるように意図的に置かれたもののことを指します。本格的なものでは噴水や彫刻、石灯籠などがありますが、デザインウォールでも十分アイストップの効果は期待できます。
例えば道路のすぐ前にプライベートな主庭がある場合、人の視線を避けるには高いフェンスなどが必要です。ですが、行き交う人の視線は本来主庭を覗こうとして視線をお庭に向けるわけではありません。なんとなく見ているだけなのです。そこに、より注意をひくデザインウォールをお庭から離れた位置に造作することで、通行人の視線は自然とデザインウォールに向かいます。これはコンクリートブロック製の壁では得られない効果ですね。主庭のプライバシー向上のため、圧迫感を我慢してまで高いフェンスや塀を建てる必要もなくなります。
見るべきものをつくり、見られたくない所を視線から守る。デザインウォールは美観向上だけでなく、人の視線をコントロールして過ごしやすくする効果があるのです。
目立つ所とそうでない所で掛ける費用をしっかり分ける
壁と名のつく所全てにデザインウォールを組み込んでしまったら、費用は莫大なものになってしまいます。まずは人の目に触れやすい動線付近から重視してデザインウォールを造作しましょう。ポストやインターホン、表札を取り付ける壁、そこが一番こだわる場所です。
次に、もしあなたのお庭がクローズド外構やセミクローズ外構であるならば、門袖壁で取り入れたデザインを敷地前面を覆う壁にも取り入れましょう。門袖壁に左官仕上げとロートアイアン等の凝ったアイテムを使用したのなら、最低でも他の前面の壁も左官仕上げにして統一感を持たせます。そうすることでお庭全体に一体感が感じられ、デザインが何倍にも美しく目に映ります。
人の目に触れにくい所、例えば隣地境界線上のブロックや裏庭の塀などは費用をかけても美観向上の効果は期待できないので力を入れなくても構いません。ただ、室内から外を眺めた際目立つ場所は前庭同様デザイン性に富んだものを取り入れましょう。
問題は角地に建つ家の場合です。この立地ではどうしても道路に面する面が2〜3あるので、全ての面に同じだけ費用をかけられないこともあります。その場合、撮るべき方法はおもに2つです。1つは前面、つまり玄関側に費用を高く掛け、その他の面をワンランク落として前面の雰囲気の似た化粧ブロックなどで側面の壁を構築する方法、2つは全体のデザインを均一にさせるために前面のこだわりを抑える方法です。これらはもちろんケースバイケースなので、デザイナーとよく相談する必要があります。
左官仕上げしていい場所わるい場所
デザインウォールの花形と言えば、やはり左官仕上げですが、左官にも向き不向きの場所があります。
第一に日当たり、風通しが悪くジメジメした敷地です。このような空間では左官仕上げの壁もしばらくすれば、壁面にカビやコケなどが発生してしまいます。そうならないためには、壁造作の前に現状を向上させるためにお庭の各所に改良を加えてからのほうがいいでしょう。昔からある隣地境界上の高いブロック塀のせいで風が通らないのであれば、何段か解体してメッシュフェンスを取り付けましょう。
地面が粘土質の土むき出しで水はけが悪ければ、コンクリートやタイルなどで床面を固めてきちんと水勾配を付けて、排水処理を完璧にしましょう。ついてしまったカビやコケのケアは、カビなら酸性洗剤、コケなら5倍に希釈した酢が有効です。
床面が土むき出しの場所に左官の壁を取り入れるのも、場合によっては考えものです。白く美しい左官仕上げの壁と下草などの植栽は相性抜群ですが、雨の際の泥はねによる汚れは避けられません。美しければ美しいほど泥の汚れは目立ちますが、壁の足元に大事な植栽があっては高圧洗浄などの本格的なクリーニングも出来ません。
その汚れをナチュラルテイストなお庭の一部と捉えられればいいのですが、どうしても気になる場合は、その箇所に貼るタイプの薄いレンガや彩り豊かな乱形石でデザインしてみましょう。それら自然素材のアイテムならば植栽や左官仕上げの壁ともマッチしますし、泥はねの汚れも気にならず掃除の際も汚れを落としやすくなります。
代表的なデザイン12例とその効果
デザインウォールは使う素材や立地条件、ご家族の方の趣味嗜好で様々な形に変化します。ここでは代表的なデザインの写真を例に出し、どのような効果をもたらしているかを解説していきます。是非ご自身のお庭に投影してみて、どのデザインがマッチするか想像を巡らせてみてくださいね。
デザインウォールの種類
1、クローズド外構の基本形
こちらのデザインはクローズド外構における基本的な形のデザインウォールです。門まわりに必要な表札、ポスト、インターホンは全てデザインウォールに取り付けています。門木目調の汎用材で造作した梁の下部にダウンライトを取り付けて門灯としているので、夜になると一風変わったライティングの美しさが味わえます。
壁の白を基調とし、アイテム周辺には汚れに強い光沢のあるタイルを使用して特別感を演出しています。雨による汚れを軽減するため、自然石の平板を笠木として使っているのもポイントです。
2、セミクローズ外構の基本形
こちらはセミクローズ外構の基本的なデザインです。動線の邪魔にならないようアプローチの隣に配置されたデザインウォールは自然石をかたどった擬石のタイルが貼られています。足元はナチュラルテイストに仕上げるため一部植栽のスペースを取り、そこに門灯として背の高いポールライトが配置されています。背の高い光源のおかげで、これ1本で夜は十分明るさを感じられます。
植栽スペースはそのままにしていると泥はねで壁が汚れてしまうので、化粧砂利を撒いて土の面を隠しています。
3、コンパクトなデザインウォール
こちらは旗竿地に取り付けたデザインウォールです。幅が限られた旗竿地のアプローチなので、横幅を取らないサイズで作られた壁には、お庭全体の雰囲気にマッチするよう、自然の似合う可愛らしい感じで彩られています。
左官もラフ仕上げでナチュラルテイストなデザインで、軽やかさを表現するために小さな窓を3つ縦に造作してあるのが特徴です。下草で床面を敷き詰めているので、土による汚れも味として感じられますね。
4、道路境界線と玄関が近い場合のデザインウォール
敷地の広さの関係上どうしても道路境界線と玄関のドアが近くなってしまい、ドアを開け閉めするたびに室内が道路から丸見え、という立地のお住まいは多くなってきています。そんな場合もデザインウォールを間に噛ませることで解決します。
アプローチは曲げて作り、道路から玄関を隠すように壁を造作します。その際、ドアを隠そうとするばかりあまりにも大きな壁を作ってしまうと圧迫感を感じてしまいます。室内への風通しも悪くなってしまうので、適度な大きさ・高さの壁に留めましょう。
この写真では、そこまで高くない壁の上に汎用材を配置してドアをある程度まで隠しています。これくらいの高さでも道路側からの視線はカットできるので、暮らし易さ向上の為にデザインウォールは必須アイテムですね。
5、目隠しのためのデザインウォール
このデザインウォールの裏側はプライベートな主庭が広がっています。デザインウォールの奥にはタイルテラスとリビングルームと直結する掃き出し窓があるので、この角度にはどうしても人の目を遮る壁が必要になります。牧歌的なデザインの丸みを帯びたデザインウォールは両サイドのアメリカンな雰囲気の木目調フェンスとマッチし、自然をより感じられるデザインになっています。
白い壁面を泥から守るため、貼りレンガを壁の下部に取り付けているのも美しさを保つ秘訣です。
6、動線を複数設ける際のデザインウォール
ドアに向かって一直線に向かってくるお客様や車の乗り降りのために行き来する家人とでは動線が違ってきます。目的物が分かれるクローズド外構の場合、門扉を1つにしてしまうと長年使っているうちに不便を感じてしまうので、動線の数だけ門扉も増やしてしまうのも一つの手段です。
片扉の方の門扉はお車に用のある方しか使いませんが、最短距離を進めるのでストレスを感じずスムーズな移動が可能です。
7、角地のデザインウォール
角地に家がある場合、デザインウォールも2面分必要になるケースもあります。この写真では角地にデザインウォールを丸く曲げて造作し、柔らかい雰囲気と目隠しを兼ね備えたデザインを両立しています。側面側までしっかり囲ってしまうと圧迫感を感じるので全て囲うことはしていませんが、自由な出入りを制限するためにロートアイアンのチェーンポールを使用して動線を1つに絞っています。
右側の道路が少し坂道になっているので、その角度にあわせてデザインウォールの天端を坂状にしています。お庭と道路の調和が取れているのが隠れたエッセンスといえますね。
8、奥行きを感じさせるデザインウォール
空間に限りがある場合こそ、あえてデザインウォールを2枚から3枚ほど重ねて作ってみましょう。壁が重なることで立体感と奥行きを視覚で認識し、実際よりも広さを感じることが出来ます。壁を複数作る場合は異素材同士であるとより違いを感じられます。写真では手前は左官仕上げ、奥側は擬石を貼っています。
壁の隙間に大きな化粧砂利を敷設しているのも、より奥行きを感じさせるアイディアです。
壁を数枚造作する際は、一枚一枚を独立して作るより、目立たない程度の控え壁を間に噛ませて一つの構造物として作ると、地震の揺れに強いデザインウォールになります。
9、風通しを重視したデザインウォール
主庭で日光や風を受けてくつろぎたいけど、人の視線はカットしたい。そんな時はスクリーンブロックやウッドポールを取り入れて壁を作ると人の視線はカットしつつも採光性、通風性も確保できます。強度としては強くはないので、車の通りの多い道路境界線上に取り入れる場合は安全性を確認する必要があります。
10、異素材を多用したデザインウォール
このデザインウォールは沢山の素材を用いて作られています。アイテムは細身のロートアイアン製の表札、陶器を模したポストとインターホンカバーとナチュラルテイストなもので統一しています。デザインウォールは、白い左官仕上げをベースに暖色系の乱形石に透かしブロック、笠置と手前の花壇にはレンガを用い、壁を挟むようにアルミ製のウッドポールを取り入れています。
沢山の異素材に囲まれてもデザインの雰囲気がバラバラにならずに統一感を感じられるのは、それぞれのアイテムの持つテイストがひとつにまとまっているからです。今回は全てナチュラルテイスト、自然を身近に感じさせてくれるアイテムですね。スタイリッシュなアーバンテイスト、和・アジアンモダンな雰囲気のもの等。エクステリア素材には様々な雰囲気のものがあるので、沢山の素材を用いる場合は雰囲気の統一を忘れないようにしましょう。
11、ベンチと一体化した主庭のデザインウォール
デザインウォールは前庭だけのものではありません。こうして主庭に用いてリビングルームからお庭を臨めば、あなただけの美しい表情を見せてくれます。人の目を木にせず憩いのひとときを楽しめる場所なので、ベンチなどと一体化しても楽しいですね。自然石をあしらった丸みのあるデザインウォールはお庭のコーナーにピッタリはまり、同じく自然石で作ったベンチは中央にシンボルツリーを配することで自然をより身近に感じられます。
アッパーライトによって照らされるシンボルツリーの影は夜のお庭で魅力的に踊ります。デザインウォールが光を遮ってくれるので、お隣さんに迷惑をかけることもありません。
12、水栓と一体化したデザインウォール
こちらも主庭用のデザインウォールですが、こちらは水回りも完備しています。給水・排水管を内部に取り込めば、このように水栓を取り入れて素敵にデザインできます。この仕組を玄関前に取り入れれば、スペースに限りがある前庭でも水回りで場所を取られることもありません。
デザインウォールに使われる人気の素材
デザインウォールは造作する場所や形状によっても大きく印象を変えるので慎重な検討が必要ですが、素材選びもまた大切なポイントです。自身の好みに偏り過ぎるとお庭全体のイメージと離れすぎたり、デザインがしつこくなってしまう恐れもあります。
デザインウォールでよく使われる人気の素材もまたデザインの一部に過ぎないので、よく検討の上、上手にお庭の一部に取り込んでいきましょう。
左官仕上げ
ジョリパットなどの塗材で左官職人がコテや専用の道具を使って壁を塗り仕上げる手法です。仕上げ方もラフ仕上げや扇仕上げ、櫛引仕上げなど様々なデザインがあり、どのような外観の家にもマッチするものが見つかります。また、職人によって出来不出来の差が激しいのも特徴で、安さが売りの業者に頼むと思い通りの出来栄えにならずに後悔する可能性もあるので、業者選びの際は注意が必要です。
白系の壁が一番人気ですが、エクステリアがナチュラルモダンな雰囲気でしたらイエロー系やピンク系の塗料を選んでみても優しい雰囲気がお庭にマッチするでしょう。
色見本を見る際は、くれぐれも室内ではなく実際にお庭に出て太陽光の下で見ることをお勧めします。室内の蛍光灯に照らされた色見本は本来の色から多少違って見えるため、そのイメージのまま施工を進めると終わった時に違和感を感じます。やり直しのきかない部分ですので、必ず外に出て自分の目で確認しましょう。
レンガ
土や粘土を主原料とする自然素材のレンガは、自然素材だけが持つ温もり、そして次代に流されない普遍のフォルムが魅力です。自然素材なだけ合って、ナチュラルモダンなお庭や植栽との相性は抜群。笠木としてデザインウォールの上部を雨から守ったり、薄いレンガを壁の壁面に貼り付けてデコレートしたりと、様々なデザインに対応可能です。
デザインウォールとレンガの花壇を一体化してアプローチに緑を加えてみるのも、訪れるお客様の目を楽しませるアイディアとして長く愛されているデザインの一つです。
デザインタイル
壁に組み込むことで簡単に印象を変えてくれるのがデザインタイルの最大の魅力です。豊富な種類の形や色、質感は可愛らしいものからクールなものまで様々な種類があります。
ナチュラルモダンな前庭なら自然石を形どった擬石タイルを、シャープな印象を作り出したいならスクエアな外観のセラミック製タイルを用いてみるのはいかがでしょう。
近年ではライン状に凹ませた部分にのみタイルを貼り、そこに表札やポストなどを組み込むデザインが主流となっています。組み込むアイテムとよく見比べて、最善のデザインタイルを見つけ出しましょう。
ブロック
サイズの大小はもちろん、素材も様々なブロックはデザイナーの腕の見せどころと言ってもいいほど多様なデザインが可能です。閉鎖的になりがちな壁に、光と風を通してくれるスクリーンブロックや空洞ブロックは、夜を照らすライトの光を浴びることで美しい陰影を空間に描き、ファサードをドラマチックに演出してくれます。
シャープな雰囲気のガラスブロックは、スタイリッシュに空間を彩ります。色やサイズを掛け合わせて積み上げることで、美しく印象的なデザインウォールを生み出します。日差しを浴びてきらめく昼の表情の他、夜間にライトアップすればレンガでは表現できない幻想的なナイトシーンになるでしょう。
自然石
自然の悠久なる営みと、産地固有の環境や風土が生んだ自然石。同じ産地や同じ種類でもその表情はひとつひとつ異なります。画一的でなく硬くて加工が難しいのが自然石の特徴です。そのため施工を行う職人の熟練度によって出来栄えの良し悪しが変わってきます。もし自然石をデザインウォールに組み込みたい場合は、デザイナーの施工写真の自然石の貼り具合を確認しましょう。隙間なく美しく貼られている場合は合格、反対に隙間が多く小さな端材を多く貼っている場合はその業者は候補から外しましょう。
自然石は壁面だけでなく天端でも笠木として活用できます。目立たないところですが、壁を雨の汚れから守るとともに自然の美しさをより感じられるデザインになるので、忘れずに取り入れたいポイントです。
まとめ
デザインウォールは様々なデザインのお庭にも必ずマッチするアイテムの一つです。美観の向上だけでなく、たくさんのアイテムの土台となる機能面、アイストップや目隠しの役割を果たしてくれるプライバシー面と、沢山の恩恵が得られます。
デザインウォールの名前の通りデザインの良し悪しがキモになってくるので、お庭に取り入れる際は、妥協せず納得がいくまでデザイナーと議論を重ねましょう。全ては何年先も愛し続けられる理想のお庭のためです。