エクステリアと一言でいっても一体どこからどこまでをエクステリアと呼ぶのでしょう?エクステリアとは近年作られた造語で、家の内部の装飾を指すインテリアの反対語として生まれました。なので、門まわりだけでもお庭全体でもエクステリアに相当します。ではその大まかな括りのエクステリアを細分化してみると、一体どんなカテゴリーに分かれていくのでしょうか。小さく細かく分けていくとお庭の全貌もはっきりし、ご自宅にマッチしたお庭が見つかるかもしれません。ここではお庭の種類、デザイン、部位などを1つずつ解説していきます。
外構の種類
外構とは読んで字のごとく「外」の「構え」、つまりお庭全体の作りを指します。外構のタイプは大きく分けて3種類あり、それぞれ特徴とメリット・デメリットがあります。生活環境や立地条件によって選んでもいいもの、選んではいけないものがありますので、ご自身の状況・条件と照らしあわせてベストなスタイルを選択しましょう。
開放的な空間が魅力のオープン外構
オープン外構とは言葉の通り、門扉や塀、フェンスなどで閉ざされていないすっきりと開かれたお庭のスタイルのことを言います。近年建てられているの家は洋風のタイプが多くなっているので、もともと西洋のスタイルのオープン外構はよくマッチしています。オープン外構のメリットは第一に開放感、第二に工事費が安く抑えられる、第三の理由は意外にもセキュリティ面の向上です。
オープン外構は構造物をほとんど建てない外構なので圧迫感を感じずすっきりとした印象を感じます。遮蔽物がないので道路からも家がよく見えるので、建物が見栄え良く見えます。お庭に用いるアイテムが少ないので他の2つの外構よりも工事費用が低いのも魅力です。そしてセキュリティ面ですが、空き巣が昼に敷地内に侵入しても、遮蔽物がなにもないため道路から様子が丸見えです。
その為に泥棒は逆にオープン外構をターゲットに選ばないのですが、あくまでこれは昼の話です。夜になり姿が闇に隠れていれば、格好の標的になってしまいます。こうならないためにも、オープン外構を選ぶ場合はライティングの充実が必須と言えます。
また、オープン外構はプライバシーも守られにくいというデメリットがあります。立地条件によっては玄関を開けたら通行人と目が合う、リビングでくつろいでいても道路に人が通るたびに気にしてしまう、という悩みが生じる場合があるので、気になる際は視線をカットしたい場所の前にフェンスや立木を設けて自然な目隠しを作ることでストレスが軽減されます。
堅牢な作りでプライバシーを保つクローズド外構
クローズド外構はオープン外構の反対で、敷地をぐるっと門扉やフェンス、塀などで囲って敷地の外と中をしっかりと区切るタイプの外構です。
不特定多数のお客、特にセールスマンなどに敷地内に入ってこられるとストレスに感じてしまう方もいらっしゃると思いますが、門扉と囲いでしっかりとガードしポストやインターホンも門扉のそばに取り付ければプライバシーは十分保たれます。ゆっくりくつろいだり洗濯物を干す際も人の目を気にする必要がないので、お庭はリラックスできる空間になります。
ですが、囲いを高いブロック塀や隙間のあまりないフェンスなどで作ってしまうと、泥棒に一度中に侵入されたら外からはまったく泥棒の姿が見えません。ですので、プライバシー面とセキュリティ面のバランスをよく考える必要があります。
費用面ですが、家の周囲全てに費用を投じなければならないため工事金額は総じて高くなります。対策としては道路に面した前面の囲いのみを見栄え良く豪華に作り、両側面や裏手の家々に囲まれた三方は安価なコンクリートブロックやメッシュフェンスで作り、費用をかける場所を明確に分けることで金額と見栄えのバランスを図りましょう。
また、角地など道路に面する箇所が多い場合は、その分しっかりと費用を費やさないと貧相に見えてしまう恐れがあるので注意が必要です。
いいとこ取りのセミクローズド外構
セミクローズド外構は名前の通り、閉ざされ過ぎないクローズな外構で、オープン外構とクローズド外構の中間のスタイルです。一般的には敷地自体はフェンスや塀で囲いながら前面のアプローチや駐車場は門扉やゲートで仕切らない、比較的開放的なデザインです。
人目が気になるところは部分的にデザインウォール(意匠性の高い壁)やシンボルツリーを設けて目隠しをしたり、アイストップ(人の視線を集めて見られたくないところから目を逸らさせること、もの)にしたりしてプライバシーを保ちましょう。セミクローズド外構は予算に応じた足し算・引き算が容易なので、様々な条件にフレキシブルに対応できる外構と言えます。
人気のエクステリアデザインの種類
外構とエクステリアのデザインはまた意味合いが違ってきます。エクステリアのデザインは人に例えたら服と同じです。人(家)に似合う・似合わないや流行り廃りがあるので、気に入ったデザインが家にとってベストなデザインとは限りません。この項目では人気のエクステリアデザインをご紹介します。家のフォルムに合ったデザインのタイプを見つけ、理想のエクステリア作成の準備を整えましょう。
自然の風合いを大切にするナチュラルモダン
現代の、今風の、という意味を持つモダン。インテリアでも使われるこの言葉はエクステリア業界でも活用されるキーワードです。
モダンと聞くとシンプル、シャープ、スタイリッシュといった洗練されてどこか温度を感じないようなイメージを持ちますが、そのモダンにナチュラルテイストをプラスしたナチュラルモダンはふたつの要素を持った人気のコンセプトです。
ナチュラルモダンは、自然の温かみを取り入れたモダンスタイルです。ガーデンルームやルーバーフェンスなど無機質な構造物を取り入れつつも植物や木材を巧みに掛けあわせて、機械的な冷たさをマイルドにしています。洗練された最先端の美と時代の古今を問わず人々に求められてきた自然の癒やしを融合させた、どんなご家庭・建物にもマッチするお庭です。
床面はコンクリートよりもアースカラーであるブラウンを基調としたレンガや化粧砂利、また芝生で構築すると自然の温かみが容易に表現できます。花壇やウッドデッキ、パーゴラやトレリスなど自然を身近に感じさせるアイテムも採り入れたいところですね。シンボルツリーとして最低でも1本は立木を植えるとベターですが、1本のみの場合は冬に全て葉を落としてしまう落葉樹よりも一年を通して緑を見せてくれる常緑樹をチョイスしたほうがいいでしょう。
スタイリッシュで飽きのこないシンプルモダン
シンプルモダンは、現代的、シンプル、あっさりしているといった特徴を持つガーデンスタイルです。抑えた色味を基調にガラスや金属系の素材・アイテムを使ってシャープで軽やか、機能的なデザインが求められます。そのため、お庭の基本はモノトーンとなるでしょう。白と黒を上手く使うことが、シンプルモダンらしさを発揮する秘訣です。
壁は昔ながらのコンクリートブロックやアースカラーのレンガなどではなくスタイリッシュなデザインの化粧ブロック、またはホワイトの塗り壁を用いると全体のデザインが引き締まります。表札はステンレス製であまり主張しない大きさのものがベターですが、インターホンカバーと兼用したもので小さく1つにまとめるのも機能的で洗練せれた雰囲気になります。カーポート、フェンス、門扉など金物を多用する場合はメーカーとカラーを全て統一することで、全体の一体感が際立つのでおすすめの手法です。
もちろん植物を取り入れても大丈夫ですが、土の面がむき出しだとせっかくのシンプルモダンの雰囲気に不似合いな温かみが混ざってしまうので、モノトーンのカラーの化粧砂利を土を隠すように敷設するのがいいでしょう。
懐かしい気持ちにしてくれる和モダン・アジアンモダン(オリエンタル)
和モダンはその名の通り、日本人の琴線に触れるような和の雰囲気を取り入れたモダンスタイルのことです。お庭における和モダンは完全な和庭とは違い、タイルやフェンスなど現代的で洋風な素材を使いながらも、平板や砂利などの石材、竹、苔やリュウノヒゲなどのグランドカバーを用いることで和と洋のバランスをうまく取っているタイプのデザインになります。
アジア系のデザインは曲線よりも直線を多用することでオリエンタルな雰囲気を表現できます。金物のフェンスも、横桟ではなく縦桟を選ぶことで和のテイストが感じられます。床面を彩る乱形石は海外原産のピンクやイエローではなく、黒や焦げ茶のカラーの石材を用いて常緑の植栽を添えると一気にアジアンなイメージになります。和ではなく東南アジア風にしたい場合は、木材はスギやクリの木ではなくインドネシア原産のウリンを使ったり、バリ風のレリーフなどを加えるとうまく表現できます。
誰もが思い描く正統派南欧風のコートダジュール
コートダジュールとはフランス南部の海岸のことですが、最近では南欧風のデザインのお庭をコートダジュールとも表現します。優しさを感じさせる色、温もりのある素材で作られたデザインは、まるで地中海の沿岸にたたずむような家々をイメージさせます。
全体的なカラーとしては白や黒などのすっきりとした色合いは避け、ピンクやオレンジ、イエローなどの暖色系で構築されます。柔らかく・温かくが基本で、デザインの各所に曲線が用いられ、ロートアイアンのアイテムも多用されるのが特徴です。
リビングルームの掃き出し窓に接するようにデッキを作る場合は、ウッドデッキよりも鮮やかなカラーのタイルを用いたタイルデッキを造作すると雰囲気が格段にアップします。植栽を用いる場合は、自然に群生したイメージで植えるよりも植栽のエリアと人の踏み入れるエリアをしっかりと分けると、よりコートダジュールのイメージに合致します。
根強い人気のイングリッシュガーデン
ヨーロッパの庭園はそれぞれの国のスタイルに個々の魅力がありますが、イングリッシュガーデン(イギリス式庭園)は「自然の美を損なわないように作庭する」という特徴があります。日本でも根強い人気のお庭の様式です。
自然のまま好みの植物をダイナミックに植えていくのがイングリッシュガーデンの魅力ですが、多年草を中心に植栽計画をすると毎年咲いてくれるので忙しい人にとっては手間がかからないので、好まれます。
季節によって色とりどりの草花の表情を楽しめるイングリッシュガーデンは、それぞれの草花の相性や色彩のバランスを考えて計画に植物を植える必要があります。植物が魅力的に見えるよう、高低差や色の濃淡を計算して植物を選定するとより魅力的に見えるでしょう。球根はすぐには開花しないので、治に咲かせたい場合は逆算して植えましょう。冬は枯れることがない常緑樹を植えるのもおすすめです。
その他、ハーブやラベンダーで足元を見た目と香りで彩ったり、可愛らしいガーデニング用具でデコレーションしたりと、魅力的な要素をお庭の各所に組み込んで物語性をプラスするのも楽しいですが、管理すべき植栽が増えるとその分手間もかかり、その手間や掃除を怠るとお庭全体がみすぼらしく見えてしまうので、自身の管理能力やお庭に掛けられる時間をよく認識してガーデニングを行いましょう。
エクステリアを構築する部位の種類
一言でエクステリア、と言ってもお庭のどこの部分を指すのかイマイチ分からないという方もいらっしゃると思います。玄関の周囲も、駐車場も、家族の団欒の場である主庭もエクステリアと呼ばれます。これら各部位の主な特徴を認識し、どのようなメリット・デメリットがあるかをご自身のお庭に当てはめて考えてみれば、自ずとどこに予算を掛けるべきかが分かってきます。
門まわり
門まわりはどんな家にも必ずある、言わば家の顔です。必須アイテムは表札、ポスト、インターホンですが、ナイトシーンでの視認性や安全性を高めるためにも門灯などのライティングも取り入れるといいでしょう。オープン外構やクローズド外構によって、これら必須アイテムをどう取り付けるかが変わってきますが、囲いで閉ざされたクローズド外構ならばもちろん門扉の外側ですね。
不要な来客を敷地内に招かないので心理的な負担は取り除かれますが、毎日の新聞や郵便物等を玄関から離れたポストまで毎回歩いて取りに行くというデメリットもあります。対して、オープン外構やセミクローズド外構はポストなどの場合はフレキシブルに対応が可能です。これらの必須アイテムを取り付ける先はポールだったりデザインウォールだったり様々ですが、お庭のデザインやご家族の好みに合わせて玄関付近に設置したり敷地境界ピッタリに造作したり出来ます。
門扉はクローズド外構のみに該当しますが、とても重要なアイテムです。門扉のメリットはやはり子どもやペットなどの飛び出し防止を防ぐことと、不審者・空き巣などの侵入を防ぐ効果があるということです。侵入したいと考える不審者はまず、お庭の全体を把握します。少しでも入りづらそう・セキュリティがしっかりしてそうと思えば、より簡単に侵入できる家を求めてターゲットを変えるので、門扉一枚でアプローチを遮るだけでも十分な効果があります。
不審者でなくともセールスマンなどあまり会いたくない種類の来客の場合も同様に、自身と相手の空間を隔てるアイテムがあることで、心理的な不安が軽減されるでしょう。
車庫まわり
車庫まわりはまず、コンクリートなどで構築された駐車場、様々な天候から車を守るカーポート、侵入者対策として取り付けるオーバードアから成り立ちます。
駐車場はコンクリートで作るのが基本ですが、お庭に合わせて床面を部分的に彩るのも全体の美観や統一感をアップさせる働きがあります。例えばお庭のアプローチに乱形石を取り入れている場合、その流れで駐車場の床面にも貼ります。その際駐車中でも石貼りが見えるよう、駐車場の前面にのみデザインを取り入れると無駄なく効果的に見えます。
カーポートや近年様々なタイプが出ているので、これが一番、というものはありませんが、それでもいくつかポイントがあります。カーポートを支える柱は梁状にして自由な長さに変更可能なタイプや奥側の柱のみで支えるタイプのものがあるので、横に2台止める・技術的に車の駐車が難しい、などの要素がある場合は柱を車の動線から避けられるようなデザインのカーポートを選ぶと、車とカーポートの接触の可能性がぐんと減ります。
カーポートの屋根材も幾つか種類がありますが、熱線吸収できる素材がある場合は、それを選びましょう。熱線吸収タイプのものならば、夏の暑い日差しもある程度熱を吸収してくれるので、そうでない場合と比べて車内の温度の上昇率は違ってきます。
門まわりと同様、車庫まわりの防犯対策も大切です。いたずら・車上荒らし対策として駐車場と道路を遮断するオーバードアは、近年人気のアイテムです。手動タイプが一番リーズナブルですが、電動タイプもあるので雨の日も濡れずに開閉できて便利です。
庭まわり
せっかく庭付きの新築を手に入れても、庭の手入れをしなければせっかくの美しさも半減してしまいます。明確な目的を持ってお庭を手に入れた方ならともかく、お庭で何をしたいかが分からない方はどうすれば見栄えが良くなるか想像がつきませんよね。
まずは、お庭に出たくなる・出やすいと感じるデザインを取り入れましょう。リビングルームの掃き出し窓の前にお庭が広がっていようとも、段差があれば特別出てみようという気持ちにはなりづらいものです。まずは段差を解消するため、ウッドデッキやタイルデッキを取り入れてみましょう。家とお庭をつなぐアイテムを間に挟むことで、お庭への距離が近く感じられます。
お庭は天候や水、土など自然の恵みを受けられる空間なので、シンボルツリーを一本取り入れてみましょう。植栽があることでお庭に彩りと目的が加わります。植栽を育てたことがないので枯らさないか心配、という方はすでに育っている3m以上の常緑樹を選びましょう。すでに成長しているので生育に問題はありませんし、状ryくじゅなので冬にごそっと落葉して大掃除をする必要がありません。
オープン外構でお庭に出ると人目について嫌、という方はシンボルツリーをアイストップとして活用しましょう。アイストップは人の注意を向けるために置くもの、という造園用語です。庭園では彫刻や石灯籠などが使われますが、個人宅のお庭ならば植栽でも十分アイストップの役目を果たします。通りを歩く人は見ようと思って庭を見ているわけではなく、なんとなく視界に入っているだけです。ですので、人間よりも高く大きいシンボルツリーやデザインウォールがあるだけで、そちらに意識が行くので、高いフェンスで囲わずともプライバシーが保たれます。
まとめ
エクステリアと言っても様々な作り方や種類、注意点があります。これらは全て取り入れなければならないものではなく、また全てのお庭に似合うとも限りません。好みももちろん大切ですが、お庭や家にマッチするかを念頭に置いてデザインをすることで、本当に必要な物が見えてくるはずです。
予算に限りがあるけれどどうしても諦めたくない、という場合は工事を複数回に分けて行うのも手ですので、あらゆる可能性を探っていきましょう。