お庭を持ったらやってみたいこと、といえばまずバーベキューや読書、ガーデニングでしょうか? 庭時間をさらに充実させることといえば、やはり収穫の楽しみ。
お庭で採れた果物をジャムにしたり、ドライにしたり、お茶にしたりと収穫した果物や野菜、ハーブなどを使いこなすスローライフ、憧れますね。
特に果樹栽培といえば、普段は買っている果物を自宅で収穫できるという醍醐味が味わえて、チャレンジしてみたいと考える方も多いようです。
でもうちは日当たりが悪いし…カラスや害虫に手を焼きそう!あまりにたくさん採れ過ぎてしまったら…などなど、栽培環境や鳥対策、消毒や用途についても考えだすと足踏みしてしまう方も。
そこで今回は一般家庭で気軽に始められる果樹と初心者にも育てやすい品種、その使い方についてもご紹介してみます。
必ず肥沃な土地が必要?日照は必要ある?
果物を育てる上で条件はまちまち
果樹を育てる上で、土壌改良が絶対必要、とか日照条件の良い場所を探して…と頭を悩ませる方も多いのですが、実はすべての果樹にとって、日照や肥沃な土地が必要というわけではありません。
例えばブルーベリーやブドウなどは比較的やせ地でも、問題なく育ちます。また、ブルーベリーなどはむしろ、酸性土が適していることはよく知られています。日本の土壌は元々弱酸性なので、特別な土壌改良を行わなくても元気に育つことが多いのです。

またブドウも同様で、肥沃な土地よりも痩せ地の方が適しているとも言われるほど。肥料を施し過ぎて根っこにばかり栄養が行ってしまうと美味しい実がたくさん付かない場合も。
どちらも日当たりは必要としますが、スグリ(カラント類)などはむしろ日陰の方が適していたりします。あまり日の当たる場所に植えてしまうと、すぐ枯れてしまうことも。
このように、ひとことに果樹といっても元気に美味しい実を付ける条件は大きく異なってくることを覚えておきましょう。
カラスは本当にどんな果樹でも食べにくる?
「実のなる木を植えると、カラスが来てしまうから…」という声をよく聞きます。また、湘南など海に近い地域ではトンビの被害も怖い、という話もありますが、本当に何にでも寄ってきてしまうのでしょうか?
実はカラスやトンビなど体の大きな鳥類は、意外と小さな実には近づいてきません。彼らには見えていないのか、恐らくそうではなく、自分たちが留まることのできる枝でない限り無理をしないのでしょう。
実際、春先に赤く美味しい実を付けるジューンベリーや、サンシュユ、オトコヨウゾメなど野鳥が好む小さな実が付く細い枝の木にはカラスは近づきません。
むしろ柿など堂々とした枝に大きな実が付く木には、よくやってきては実を持っていきますね。カラスも自分の体のサイズに見合った実をきちんと見分けているようです。
小さな実が付く木は野鳥ファンには打ってつけ。春先や秋頃には次々とかわいい野鳥がやってきて実をついばむ姿をお部屋からもバードウォッチングできたりもします。
植える場所には配慮が必要!樹種もよく考えて
しかし、実が付く果樹、野鳥が来てくれるのは良いのですが、気を付けたいのはその糞や食べこぼし、落ちた実のお掃除です。
例えば、赤いイチゴのような実がかわいいフトモモ科のイチゴノキの実は、春の白いスズランのような釣鐘状の花が終わった後、次々と実を付けます。問題なのはそのあと。
意外と鳥に人気がないのか、収穫が間に合わないほど成っては落ち、それが潰れてアプローチや道に跡が残ってしまったり、他のお宅の玄関前に毎日無数に転がってしまったり。
樹種問わず、落ちた果実を拾わずにいると腐敗して臭いの問題につながることもあります。
周囲にお家のない大草原の一軒家ならば問題ないのですが、一般的な住宅街では植える場所に気を付けたいですね。
実が大量になる樹種:イチゴノキ、ヤマモモ、キンカン、クワ
初心者にも簡単な憧れの果樹と収穫後の楽しみ
ここまでは果樹を植える上での注意点や配慮したい事柄についてご紹介してきましたが、こうした点に気を付ければ、簡単な樹種には初心者でも十分チャレンジできます!
木によっては、果実だけでなく、花や紅葉も楽しめる季節感を味わえるものもあるので、ぜひ庭木としても検討してみてください。
やっぱり一度はチャレンジしたい甘酸っぱいベリー系
ジューンベリー(バラ科ザイフリボク属)
春先の白い花と丸みのある葉、甘い実が美味しい!
樹種:落葉低木(庭木としては3~4m程度)
原産地:北米 花期:4月上旬 収穫:5月頃
お庭のシンボルツリーとしてもよく選ばれることもある落葉樹。実は1本の木から多い時で1kg以上採れる時も。ジャムにしても生食しても美味しいので、とても親しみやすい木です。黄葉も美しく、四季を通して移り変わりが楽しめます。病害虫にも強いので初心者にもぴったり。


ブラックベリー(バラ科キイチゴ属)
意外と簡単!黒い粒々食感と酸味がジャムにもぴったりなベリー
樹種:落葉低木(1m前後)
原産地:アメリカ中部 花期:4月頃 収穫:5月下旬~6月頃
バラ科のベリー系というと、ツルの誘因や害虫対策が難しいと思われがちですが、ブラックベリーは多くの品種が立ち性で、トゲもなく扱いやすいのが特徴です。しかも他のバラ科によく付く葉ダニやアブラムシなどの病害虫にかかりにくく、ほとんど無農薬でも栽培できるのがうれしいところ。

出てきたシュートを誘因する必要はありますが、ほとんど手間を掛けずに初夏頃には美味しい実を付けてくれます。実は酸味があるので、少し酸っぱいですが、甘い果物や生クリームなどとの相性抜群!もちろんジャムに加工するのもおすすめです。
(風通しが悪い場所で栽培すると枝にカイガラムシが付きやすくなりますので、通気の良い場所に植え付けましょう)
カラント類~ブラックカラント、レッドカラント~(スグリ科スグリ属)
日陰OK!ただし暑さが苦手!宝石のような美しさはカシスの名でも有名
樹種:落葉低木(1m前後)
原産地:ヨーロッパ 花期:4月下旬 収穫:6月下旬~7月頃
ケーキの上に飾られたりしてよく目にする、あの美しい透明感のある実としても知られているのがレッドカラント。スグリには白スグリや黒スグリ(カシス)など品種によって色々と流通していますが、お店には初夏頃、各品種が並びます。

まるでお庭の宝石のようなレッドカラント
スグリ類の栽培には日陰が適していて、何も育たなかったお庭の日の当たらない部分などに植えられる、という点がまず優秀です。暑さや蒸れには弱いので、ウドンコ病には注意が必要ですが、それ以外はほとんど農薬の世話にもならず放置しておいても毎年美しい実を付けてくれます!
姫リンゴやミニリンゴ(バラ科リンゴ属)
花や実も楽しめる!初心者におすすめリンゴ
樹種:落葉低木(1m前後)
原産地:中国 花期:4~5月頃 収穫:9月頃
リンゴといえば、青森など冷涼な地域で栽培されていて、それ以外の地域で育てるには相当の手間を掛けなければ…と難易度の高いイメージが持つ方も多いのでは?
でもご心配なく。小さな庭木サイズの姫リンゴやミニリンゴであれば、サイズもコンパクトで、病害虫にも強く初心者にも気軽に育てられます。
「クラブアップル」とも呼ばれる姫リンゴは、日本の北陸から北海道に自生している小さな実を付けるリンゴです。バラ科らしく花も美しく、少し小さな赤い実が枝に付いているだけでお庭のアクセントにも。

もちろん、観賞用とはいえ、皮は固めですが十分食べることができます。よく屋台などで見かけるリンゴ飴はこの姫リンゴを加工して作られています。
他の木の花粉で結実するリンゴ、基本的には他の品種と組み合わせて栽培する必要がありますが、品種によってはその必要がないものもあったり、組み合わせによっては、別の趣きのリンゴを植えてみるのも面白味があります。

小さなリンゴの実がたくさん付いている姿は本当にかわいらしい
おすすめの姫リンゴ品種
「アルプス乙女」:「ふじ」と「ヒメリンゴ」の偶発実生として育成された品種。直径10~15センチほどの赤く甘い実はほどよい酸味も。受粉樹の必要のないリンゴのため、1本でも気軽にチャレンジできる!
「長寿紅」:姫リンゴの中でも初心者向けといわれる品種で、プランター栽培も可能!ベランダなどで栽培する人も。いわゆる姫リンゴより苦味も少なく甘味酸味もバランス良し。
海外のクッキングアップル、青りんご
“グラニースミス”:ビートルズのアップル・レコードのシンボルマークに採用されたことで世界中で知られている。比較的耐暑性も有り。

酸味が料理にもぴったりの青りんご
“ブラムリー”:イギリスのリンゴ栽培の半分近くがこの品種。お肉との相性も良く、軽く煮溶かせるのが特徴。ちょっと変わったリンゴを育ててみたいなら、おすすめ!
但し、やはりリンゴはバラ科の樹木。アブラムシ、葉が委縮したり変色する縮葉病や黒星病、コガネムシの幼虫やカミキリムシなどには注意して、早めの消毒を行いましょう。
放置でもきちんと育つ南国系フルーツ
南国フルーツといえば、本州ではとても無理と思われがちですが、樹種を選べばお庭ビギナーにも簡単に育てられるフルーツも色々あります。
特にフェイジョア、キウイ、オリーブはほぼ植えっぱなしでOK。特徴を知って環境にあったものを選んでみてください。
フェイジョア(フトモモ科 フェイジョア属)
初夏に咲かせる南国系の花や実は甘い華やかな味わい
樹種:常緑中木(2m前後)
原産地:南米 花期:5月下旬頃 収穫:10月頃
かわいい姿の常緑樹として、庭木としてもすっかり一般的になってきたフェイジョアは、丸みのあるシルバーリーフが目印です。

丸みのある葉はシルバーがかり、洗練された雰囲気
春頃、ハイビスカスのような花を付けますが、その後に緑の実を付けます。皮をむいて食べてみると見かけ以上に美味しく、花もエディブルフラワーとしても華やかで甘い香りとともにいただけます。

ハイビスカスのような南国系の花は甘い味わい

意外と美味しい南国系フルーツ!フェイジョア
葉が黒くなるカビの菌が付く症状がありますが、殺菌剤などを適宜散布してあげれば、ほとんどお世話の必要はありません。
オリーブ(モクセイ科オリーブ属)
異品種を植えてグリーンの実はオイル漬けも楽しみ!
樹種:常緑高木(2~5m前後)
原産地:地中海周辺、アフリカ 花期:5月頃 収穫:10月頃
オリーブは言わずとしれたグリーンの実がおなじみですね。基本的には自家不結実性のため、結実させるには異品種を同じ敷地内に植える必要があります。
といっても、実を成らせるために必要なことはその程度で、あまり病気には縁がなく、植えっぱなしで栽培できるのが嬉しい樹種です。
気を付けたいのは、オリーブアナアキゾウムシやカミキリムシ、コガネムシなどが稀に入る事があるという点。葉の付き方が悪い、元気がない、幹に小さな穴が開いている…等の症状が見られたら、きちんと薬剤(スミチオンやオルトラン等)で処置しましょう。

多くの人が憧れる地中海をイメージさせるオリーブ

オリーブは別品種を植えて結実させます
実は渋があるためあく抜きをしますが、この方法として食塩や重曹などの方法があります。詳しくは本やネットで色々な方が紹介していますので、自分にぴったりくる方法を見付けてみてください。塩漬けやオイル漬けにするのは、あく抜きの後です。

オリーブ“ミッション”
あく抜き期間としては1か月ちょっと。食べてみるのが待ち遠しくなりますが、気長に行えば、きっと楽しみも倍増のはずです。
キウイ(マタタビ科マタタビ属)
異株を植えるスペースと棚さえ確保できればとても簡単!
樹種:落葉性つる植物(2m前後)
原産地:中国 花期:5月下旬頃 結実:10月下旬頃
家庭菜園向けともいわれるキウイ。雌雄異株のため、2本分の場所が必要ですが、そのほかは支柱や棚さえあれば、自分で勝手に巻き付いていくため、棚の場所さえ確保できれば、あまり手を煩わせずに済みます。
といっても、方々に暴れた枝はさすがにだらしなくなるため誘因は行ってあげましょう。
その後は消毒も必要なく毎年秋ころには実を付けてくれます。
栄養もビタミンCはレモンの約2倍、ビタミンEは果物の中でも最も豊富とも言われる果物。庭にぜひ植えてどんどん食べて健康になりたいですね!
特におすすめは“センセーション・アップル”。糖度が高くビタミンCが多い品種です。ぜひ異株を植えて結実させたいですね。実は追熟が必要なので、収穫後少しおいておきます。なお、キウイは落葉樹なので、葉がなくなった冬には棚から適当な光も入ります。
ミカンやレモンなど身近に1本は欲しい柑橘系
やっぱり果樹といえば、思い浮かべる方が多いのがレモンやみかんなどの柑橘系。オレンジや黄色の実がたわわに実る姿からは元気ももらえますね。でも、柑橘系=暖地というイメージから、意外と簡単に柑橘類を諦めてしまう方も。また柑橘類は鋭いトゲがあるから手入れがしにくそう、と思い込んでいる方も。まずは人気のレモンをご紹介しましょう。
レモン(ミカン科ミカン属)
代表品種から個性的な品種など種類も選んで楽しい
原産地:インド 花期:5月頃 収穫:10月頃
また近頃ではトゲも少な目の品種も国内で色々と流通しています!
“リスボン”、“アレンユーレカ”、“ビアフランカ”、”シチリアレモン”などはトゲの少ない品種も出ているので要チェック。
樹高としては2~4mと幅がありますが、庭木としては関東では3m前後で推移することが多く庭植えには最適です。

ただ、初心者向きとはいえ、注意したいのは、やはりアゲハの幼虫や枝にビッシリと付いてしまうカイガラムシです。蝶が近くを飛んでいる時は産卵に気を付けて、アオムシを見つけ次第、取り除くなど駆除を行わないと、あっという間に葉は食い荒らされてしまいます。
温州(ウンシュウ)ミカン(ミカン科ミカン属)
簡単で耐寒性もあるので初心者にも育てやすい!
樹種:常緑低木(2m前後)
原産地:鹿児島県 花期:5月中旬頃 収穫:9月下旬頃~
温州みかん、品種もたくさんありますが、多くの品種が耐寒温度がマイナス5度前後なので、北関東周辺までは栽培できます。

春頃につける花は周囲に甘い香りがただようほど。実が待ち遠しい時です。
やはり寒さや霜、雪などは冷害につながります。植え付ける場所は、寒風をよけられる日当たりの良い場所などを選んであげましょう。
また、みかんはたくさん実が成った年の翌年はあまり実の付きが良くない、隔年結果という現象が起こります。コンスタントに収穫したい場合は、昨年たくさん実が成った枝は軽く剪定したり、摘花するなどの処置を行っていきます。
品種の選び方としては、温州は早生と普通に分かれます。早生品種は寒さが本格化する間に収穫できるため、寒い地域でも栽培が可能です。
早生みかんおすすめ品種
“宮川早生” 秋頃に収穫ができる品種。糖度が高く風味もよい!
“興津早生” 毎年実を付け、甘味が強い品種
また、病害虫としては葉の中を迷路のように食害するハモグリバエや、枝を吸汁するカイガラムシ、葉や茎などを吸うアブラムシなどが付きやすく、やはり消毒が必要となってきます。
ここは柑橘類を栽培するからには、面倒がらずにきちんと駆除してあげましょう。実の付き方も変わってきます。
果実を収穫したらぜひ試してみたい!その後の楽しみ

お庭で採れた果実は生で食べたり、ジャムにしたりと、ぜひあれこれ活かしたいところですね。
姫リンゴやレモンなど、生でたくさん食べるにはちょっと大変な果物や、ジャムに適さない果物などは、ちょっとおしゃれにスムージーやドライにする方法も。
キウイやリンゴ、レモンなどを薄くスライスして数日屋外に吊るして干せば(夜と雨の日は取り込む)、3~4日で美味しいドライフルーツが完成します!

ドライにしたフルーツはヨーグルトやコーンフレークなどに入れて朝食に、デザートにぴったりです。栄養価も高まっているので、ぜひお試しを。
レモンはほかにも、スライスしてハチミツ漬けにすれば1週間前後でレモンシロップが完成。夏はソーダで割ればシュワっと爽やかに疲れを癒してくれます。

ぜひ自分でも育ててみたい、と感じた方はぜひお店やネットでチェックしてみて下さいね。自分で栽培した木から収穫した果実は一段と美味しく感じるはずです!