ひとことに、<リゾート感のあるお庭>といっても、オリーブの植えられた地中海のような雰囲気のお庭をイメージする人もいれば、ハワイのようなトロピカルな雰囲気をイメージする人もいます。皆さんがよく悩むのが家族間のイメージの違い。「リゾート」という概念が家族でまとまっていないと、出来上がった外構やお庭のテイストがごっちゃになってしまいます。
もし、あれもこれもとイメージがまとまらなくなった時には、ご家族で1本だけイメージに合うものを選んでみましょう。そこから植物や灌木類を選んでいくことで、自然と統一感が生まれます。まずはご自分やご家族が憧れるリゾートはどのような感じなのか、雑誌やネットでみんなのイメージを膨らませてみましょう。
バリのようなエキゾチックな雰囲気がお好みなら
近頃流行のリゾート系といえば、バリのような雰囲気。とは言っても、実際バリは熱帯モンスーン気候。1年を通して平均気温が25℃を下回ることはほとんどなく、当然ながらこの植生を再現しようとすると無理が生じます。
ここで大切なのは「そのまま」ではなく「らしさ」が感じられる植栽。尖った葉が個性的で目を引くドラセナ類などの樹木やニューサイランなどの植物がより熱帯の雰囲気を盛り上げてくれます。
また花がハイビスカスのようで甘い果実まで楽しめるフェイジョアも近年人気の常緑樹。大きくなり過ぎず、目隠しにも使いやすい丸みのある葉はシルバーがかっていて、明るい雰囲気を演出してくれます。
足元を華やかに彩る低木としては、新芽が淡いピンク色などになる常緑低木のリューカデンドロンや、煙のような細長い赤やクリーム色の花がかわいいグレビリア属などは南国ムードたっぷり。いわゆるレアプランツとして流通され始めたばかりですが、0℃以下にならない地域ではおすすめのグランドカバーです。
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カラッとしたハワイのような庭にしたい
ハワイやアメリカ西海岸のような過ごしやすいオープンな雰囲気を望む方は、トロピカルなムードが味わえるヤシを中心としたお庭はいかがでしょう。一般住宅のお庭では、街路樹として植えられている縦に長く伸びるワシントンヤシよりも、縦横比のバランスがよいココスヤシをシンボルツリーとして一本植えるのがおすすめ。ボリュームがあり、存在感があるココスヤシを植えれば一気にお庭はリゾート風に。
ココスヤシはゴツゴツと縦に大きく割れた幹とシルバーがかった細い葉が特徴の南国ツリーの代名詞ともいえる存在。よく混合されがちな「ココヤシ」と違い、比較的耐寒性もあり、国内の庭でもよく地植えられています。幹の高さが1.5m程度でも、葉張り(樹木の幹を中心とした樹冠の直径幅)は3mを超えますので、周辺には何も植えない方が見栄えが良いでしょう。
他にはフェニックスヤシやストレリチアなどの観葉植物も、緯度の低い静岡や三重、和歌山、四国、九州地方の温暖な地域であれば、地植えが可能な場合もあります。フェニックス・ロベレニーは、すっと伸びた幹に細い葉が密に並ぶまさに南国らしい樹木。基本的には観葉植物ですが、冬場が0℃を下回らない地域ではトライする方も増えています。もし、0℃下回るような気温になる場合は、藁でできた「こも」や「むしろ」で幹を覆い、葉に寒冷紗を掛けるなどの養生は必要です。冬が終わってからは、害虫などの恰好の住まいになってしまうので、必ず取り除いて捨てましょう。
ハワイの街路樹などでよく見かける、真っ赤なブラシのような花を付けるカリステモン(ブラシノキ)。尖った細長い常緑の葉が奔放に枝を広げる様子もエキゾチックです。耐寒性が強い常緑樹なので、目隠しにも最適。乾燥にだけ気を付ければ、比較的丈夫に育ちます。花は赤花が有名ですが、爽やかな白花も人気が高まっているので、ぜひチェックしてみてください。
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地中海風ガーデンの代名詞、オリーブのある庭
オリーブは人気度が高く、今や庭木の定番になっています。意外と知られていないのが、品種によって直立するもの、ブッシュ状になるものなどがあること。代表的な品種としては、枝が開いて暴れ気味なネバディロブランコなどと、幹が直立するミッションなどに二分されます。特にシプレッシーノなどはとてもスマート。場所を取らないので、狭い場所などには適当です。
またオリーブといえば、たわわに実った実をイメージされる方も多いと思いますが、ほとんどの品種が異なる品種を同じ敷地内などに植えることで結実する異品種交配を必要とします。もし、他に一種類植えるスペースは無いけれど、やっぱり実は楽しみたいという方は、「ピクアル」という品種がおすすめ。この品種であれば、自家受粉が可能ですので、プランナーにご相談して頂くか、ネットなどで気に入った樹形のものを探してみるのも良いかもしれません。
オリーブを主木にした場合、意外と困るのが他の組み合わせ。他にどのような木々を植えれば雰囲気を損なわずに地中海風リゾート気分のお庭になるのでしょうか。
おすすめの一つが、やはり耐寒性があって害虫にも強めのレモン。今や庭木として定番です。大きさも3~5mに成長することもあるので、メインツリーとして庭の中心に植えることもあります。また、グリーン系が多い庭木にアクセントを与えてくれるのが、ポップブッシュや西洋シモツケなどワインレッド色の木々。ポップブッシュは、細長い楕円形の葉はオリーブと似た雰囲気の常緑樹ですが、新緑は淡い黄緑色の葉で景色を和らげ、冬場はワインレッドに変色して美しい景色をつくります西洋シモツケは落葉低木ですが、1~1.5m前後にまで生長し、迫力ある枝ぶりが人気です。深い紫色がオリーブカラーにもよく馴染み、初夏には白い手毬状の花も咲かせますので、ぜひチェックしてみてください。
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自分の住んでいる場所に耐えられるか?はよく考えたいポイント
南国系の木々を色々とご紹介してきましたが、まずは自分の暮らす地域の気候に合った植物を選ばなくてはいけません。例えば、関東周辺で一般的に植えられているフェイジョアやシマトネリコでも、関東以北では雪や寒さに耐えられない場合もありますし、オレンジなどの柑橘系は品種によっては首都圏周辺でも結実が厳しいことも。落葉樹は葉を落として根だけが活動する状態で越冬しますが、熱帯亜熱帯の木々はほとんどが年中葉を落とすことのない常緑樹。寒さに対する耐性をあまり持ち合わせていません。
こうした樹木を植える場合は、厳寒期を避け、温かい時期を選んで1年ほどかけてその環境に慣らしていきましょう。それでも大雪や寒風には負けてしまう場合もあります。厳寒期には先述したような「こも」や「むしろ」などできちんと養生してあげたり、雪を早めにどかして寒さや重みから救出してあげたり、手を尽くしてあげましょう。
人気のレアプランツ(希少価値の高い植物)で他との差別化を
近年では、南米原産のアガペや、先に紹介したオーストラリア原産のグレヴィレア、南アフリカ産のリューカデンドロンなど、これまでは観葉植物や切り花として売られていた異国情緒溢れる常緑の植物や樹木も流行の兆しを受けて、徐々に生産地も増やしています。これらは葉色や形が面白く、他ではあまり見かけないだけに、玄関前のプランターや花壇に取り入れれば格段に他のお宅との違いも引き立ちます。また、常緑のため一年中、葉を落とさずに華やかさが保てるのも人気の秘密。お住まいが冬場0℃以下にならない地域であることが植栽の目安になります。
ただし、レアプランツの問題点は流通の少なさです。ネットなどで見て気に入ったとしても、現物を見ての仕入れは難しく、形が整っていない、好みではなかった…などという事態もよく聞きます。多少の妥協は仕方がない部分として受け入れる覚悟も必要です。これらも、地域的には耐寒できないけれど、どうしても気に入ってしまった…という方はプランター栽培にして、雪や霜の降りる季節は軒下や玄関などに仕舞ってあげれば冬越しも可能です。ぜひ他とは違うものを…とお考えの方は検討してみてくださいね。