【ハウスメーカーの外構工事=高い】
という誤解。
エクステリア工事は、価格的には車に近い商品です。平均的な工事価格がちょうど軽自動車1台分から高級セダン1台分くらいですから、比較するのにはちょうどいいですね。車と比べることで、エクステリア工事の”特殊性”が見えてきます。
「ハウスメーカーの外構工事の見積りが高いような気がするので、相談にきました。」
私たちの所に相談に来られる方で圧倒的に多いのが、このケースです。
見積りをざっと拝見したあと、まずこのようにお答えします。
この見積りは
高くありませんよ。
そうなんですか?
金額は普通です。
まあ、そこが問題なのですが…。
そこが問題??
考えてもみてください。今はネット全盛期、金額の比較はネット上で簡単に、すぐにできます。
高い単価では自社で外構工事が取れず、外に流れてしまうことをよく分かっているハウスメーカーは、世の中の「相場」に合わせて見積もるように担当部署に指示を出します。「利益はきちんと確保しろ」という言葉を添えて…。金額は高くない。でも、その中には下請け会社と元請け会社(つまり住宅会社)の利益がきちんと入っている。
どうすればこんなことが成り立つでしょう?
単価を上げずに利益を確保しようと思えば、製造原価を下げるしかありません。
ハウスメーカーによる外構工事の特徴
単価を上げずに利益を確保しようと思えば、製造原価を下げるしかありません。外構工事における製造原価は、材料費と施工費です。まず材料費を下げるにはどうすればいいでしょうか?
下げる
には?
「小品種・大量発注」
(全く同じものを大量に買い付ける)
これだとメーカーも製造コストや保管・輸 コストが減るためにある程度の値引きに応じてくれます。ハウスメーカーが外構工事の打ち合わせの際にほとんど選択肢を用意しない(選ばせない)のはこのためです。
「◯◯ハウス推奨」などと言って必ずその数パターンの中から選ぶように誘導します。このようにして、どこもかしこも全く同じ材料を使った、金太郎飴のようなエクステリアが出来上がることになります。佐々木さんのお宅が、典型的な「金太郎飴外構工事」と言えるでしょう。
では施工費を下げるにはどうすればいいでしょうか?これも答えは簡単、
下げる
には?
「安く作ってくれる
職人だけに依頼する」
(全く同じものを大量に買い付ける)
外構工事を行う職人になるには実はなんの資格もいらないため、素人から本物の「プロ」まで、全く見分けがつかずに存在しています。
当然ですが、駆け出しの職人は、単価をうんと安くして、自分から売り込みにいきます。こういう職人を使うのがハウスメーカーです。都合のいいことに、お客様の大半は「初めて新築する人」ですから、工事の良し悪し、出来栄えの良し悪しを判断する目を持ち合わせていません。
建売住宅と同じで、完成してしまうと「プロセス」は見えませんから、コンクリートが薄くても、基礎を作らずにブロック塀を立てても、柱がまっすぐに立っていなくても、全くわかりません。このようにして、「超低コスト」工事が完成するのです。
初めて入った定食屋さんで、「生姜焼き定食:300円」と書いてあったら心配になりませんか?
この場合、利益ゼロでは仕事にならないので、おそらく300円のうち200円は利益でしょう。
そうすると、豚肉とキャベツ、ご飯に味噌汁に漬物、さらに人件費。これら全てを合わせて100円で賄っていることになります。
どんな材料が使われているのか・・・
もはや恐ろしくて注文する気になりませんね。
これと同じことが、日々外構工事では行われています。
「価格が高くないことが問題」というのは、こういうことなのです。
佐々木さんは、エクステリア専門店のA社に見積りをお願いし、ハウスメーカーのものとほぼ同じという結果になりました。ここで、
そしてこのような「罠」は、専門誌では必ず【やるべき】だと言われている「相見積もり」にも潜んでいるのです…。
「安くていいもの」の
ガソリンや醤油、ティッシュペーパーのように、どの店でも全く同じ商品(=全くおなじクオリティーのもの)が手に入るなら、1円でも安いところで買おうとするのは当然です。
しかし、外構工事は先ほどの例のように「全く同じもの」が存在しません。カルピスのように、いくらでも「濃さ(利益)」を調整できてしまうからです。この仕組みが分かると、相見積もりにもほとんど意味がないことが分かります。
たとえばA社の見積りを見せられたB社は、A社よりも数%安い金額を提示します。
そういう会社は、どんな見積りを持ち込まれようと、必ず「数%低い」金額を出します。
なぜなら、それでもきちんと利益が出るように「工事内容」を変えてしまえばいいからです。
→→→明らかにスーパーBで買った方が得。
明らかにスーパーBで買った方が得!
・・かと思ったら、実は中身がブレンド米だった・・
日用品を買うような感覚で「安くていいもの」を無意識のうちに探してしまう
既製品ではなく「オーダーメイド」の外構工事では「後出しジャンケン」が簡単に出来てしまう
誠実な仕事がされたかどうかを外から見分けることは非常に難しい
残念ながら、「安さ」を売りにした会社はほぼ全てここに当てはまると考えた方がいいでしょう。
安くていいものを一生懸命探した結果手に入るものは、中身がスカスカの「安くて良くないもの」でしかないのです。
ちゃんとした材料と経験豊富な職人を使い、「質の高い」サービスを提供する会社では、どうしても製造原価は高くなってしまいます。誠実な仕事をしようとすると、どうしても原価が高くなってしまうのが「オーダーメイド商品」の特徴とも言えます。
また、「安さ」を武器にしている会社は、実は「安く売っても十分儲かる」ようになっています。
なぜなら、人件費を中心とした製造原価をどんどん切り詰めることで、利益を確保することができるからです。
「得られる価値」と「払った金額」を純粋に比較すると、むしろ「かなり払い過ぎ」であると言えます。
佐々木さんは幸いなことに
「相見積もりの罠」にハマることはありませんでした。
もしハマっていたら、ハウスメーカーに依頼した場合よりも
悲惨な結果になってしまったことでしょう。
しかし、もう一つの致命的なミスがありました。
それは「外構工事をサービスしてもらった」ことです。
「外構工事を値引きします」の
かつては、外構工事まで含めて全て一括でハウスメーカーに任せるというスタイルが常識でした。
しかし、外構工事は下請けに丸投げするだけだということが知れわたるようになってからというもの、受注が取れにくくなってきます。
そこで、外構工事を「(表向き)タダ」にすることによって、自社で受注しようという会社が増えました。「家の値引きだと100万円まで望めないけれど、150万円の外構工事ならタダになる。」それってほんとに得でしょうか?
大手のハウスメーカーは構造体や基本仕様は決まっているため、(安売り外構業者のように)安くした分中身を薄くするということができないからです。2500万円の住宅本体価格から150万円を値引きしてもらえるなら、とてもいいお話です。
しかし、外構工事の場合は違います。150万円の値引きと表示しても、実際にどんな内容の工事を行うかは不明です。原価50万円くらいの工事でも「これで150万円です」と言われてしまえばそれまで。外構工事には「原価を圧縮する手段」が無数にあるからです。
無料で提供する工事、まったく利益の出ない工事をどれだけきちんと行うのか…
ちょっと想像しただけでも怖いものがあります。無料にはせず、300万円の工事を半額にしますなどのやり方もありますが、これもやっていることは全く一緒です。
佐々木さんは「住宅の値引き」と「外構工事のサービス」を天秤にかけ、「よりお得」な方を選んだつもりで外構工事をチョイスしました。
そしてそれは恐らく間違った判断だったのですが、このケースが恐ろしいのは、「間違いを後から指摘することが不可能」だと言うところです。サービス工事の場合、詳細な図面や見積りが提示されることは稀です。その工事が本当に150万円に見合うものだったのか?
手元に残った乏しい資料では、それを確かめる方法はありません。
だから、これだけは覚えておきましょう。
値引きの要求は、必ず「建物本体」に対して行う。
これが一番の防衛策になります。
佐々木さんが陥った数々の罠。最後の一つは「150万円という予算設定」です。
外構工事の費用は、一般的に住宅価格の約10%(250〜300万円)と言われています。しかし、「外構工事に250万円も使うくらいなら、もっと内装にお金を使ってもらおう・・」と考えるハウスメーカーは、勝手に外構工事の費用を100〜150万円と設定してしまいます。
資金計画書に書かれたこの数字を見て、住宅を建築中の方は勝手にこう思います。
「自分たちが計画している住宅に見合った外構工事の費用を予め計上してくれてるんだな」
新築工事も終盤になったところで、それが「思い込み」と「思い違い」であったことに気付かされます。
冒頭に述べた通り、150万円という金額には根拠は全くありません。しいて言うなら、「生活に支障が出ない程度には工事が出来る(かもしれない)金額」というのが近いでしょうか。「かもしれない」と申し上げたのは、それすらも無理なケースがあるからです。土地が広い人も狭い人も、角地の人も敷地延長の人も、高低差のある土地も無い土地も、一律150万円。エクステリアのプロからすると、こんなことは有り得ません。いろいろな条件がたまたま合致して、結果的に150万円になった、という方はいますが、これは完全な「まぐれ」です。99%の方は、何ら根拠の無い予算が資金計画書に書かれていたことに気付き、愕然とすることになります。
「予算150万円でどこまでできますか?」
家が完成間近になって私たちのところに相談に見える方の多くは、このような質問から始まります。
ハウスメーカーとの打合せが進むにつれ、150万円という金額に根拠が無いことに気付き、慌ててその道の専門家に相談に行く・・そんな展開です。
佐々木さんの場合、生活に不満が出ないレベルの外構工事を行うには、そもそも150万円では全然足りなかった、ということになるでしょう。
ただ、新築の方の多くが佐々木さんと同じような経験をしています。
そう、佐々木さんは「多数派」なのです。
残念な事情
とても立派な家なのに、エクステリアが無個性で貧弱なケースはよくあります。
シワ一つ無いスーツを着ているのに、足元が運動靴・・これに近い違和感と言えば分かりやすいでしょうか?それだけの費用をかけた家なのに、どうしてそれに見合うようなエクステリアにならなかったのでしょうか?それは、「99%売り手(ハウスメーカー)の都合」によるものです。
資金回収を急げ!
全ての工事が終わらないと、代金の精算が出来ません。外構工事は一番最後の工事。なるべく早く終わらせ、少しでも早く資金回収をしたい。
人件費を抑えろ!
職人に図面だけ渡しても、その通りにいかないのが外構工事。ご近所との話し合いや材料の手配、毎日の現場確認と、とにかく想像以上に時間と手間がかかります。お客様との打ち合わせは出来れば1回で済ませ、工事内容をできるだけ簡単にして設計士・現場監督の手間を少しでも減らしたい。
予算内で収めろ!
住宅の打ち合わせを進めるうちに、当初の予算を大きくオーバーしてしまうことはよくあります。その時、真っ先に削らるのが、外構工事などの「別途工事」の予算。そもそも最初からギリギリの予算なので、残った金額ではコンクリートで固めるしか方法がありません。
要望を聞くな!
よかれと思っていろいろな提案をすると、「こんな予算じゃ全然足りないじゃないか!何を根拠に予算を組んだんだ!」なんてお客様に言われてヤブヘビになってしまうので、余計なことは言いたくありません。そのため、お客さんから「アプローチはタイルで…」「ここはレンガを使って…」「このあたりにも植木を2〜3本…」なんてお金のかかることを言われてしまうと、とても困ってしまいます。
現場見学会(内覧会)は1日でも早く!
完成したらすぐに見学会を行って、次の見込み客を早く集めたいというのが住宅会社の本音。複雑な外構工事だと1ヶ月以上かかってしまい、見学会の開催が遅れてしまうため、絶対にそんな提案は出来ません。
クレームを出すな!
使い慣れないレンガやタイル、自然石などは施工方法も難しく、図面通りに仕上げるのも一苦労。万が一作り直しということにでもなれば、利益どころか大幅な赤字になってしまいます。クレームを出さないためには、技術や経験の差があまりでない、手馴れた簡単な工事内容にしておくのがベストです。
照明やカーテン、エアコン、暖房設備と同じように、ハウスメーカーにとって外構工事はあくまで「付録」。売りたいのは住宅であって、外構工事ではありません。
あなたはハウスメーカーに任せたつもりでいても、実際にプランを描いたり見積りを作るのは、ハウスメーカーに紐付いている「下請け会社」です。
そう、あなたが「丸投げ」したように、ハウスメーカーも更に下の会社に「丸投げ」するだけなのです・・・。
ここまで「ハウスメーカーが行う外構工事の特徴」をお伝えしてきました。
しかし佐々木さんが失敗した原因は、
ハウスメーカーに依頼したことだけではありません。
外構工事という「商品そのもの」の特殊性。
それも失敗の大きな要因になっています。